研究課題
本研究の目的は、「樹状細胞におけるPTPN3の生物学的意義を解析し、PTPN3抑制治療が樹状細胞機能も活性化できる新たな癌免疫治療となり得るか検証する」ことである。本年度は未熟、成熟樹状細胞の誘導法の確立と、樹状細胞におけるPTPN3分子の生物学的意義の解析を行った。末梢血単核球のプレート付着分画(単球)にGM-CSF及びIL-4を加えて未熟樹状細胞(CD14-CD11c+CD83- cells)を誘導する。さらに、TNF-a、INF-gを加え成熟樹状細胞(CD14-CD11c+CD83+ cells)を誘導した。未熟、成熟樹状細胞のPTPN3発現をPCRで行った。PTPN3は未熟、成熟樹状細胞共に発現しており、その発現は成熟樹状細胞で高いことが分かった。次に、PTPN3siRNAを導入して樹状細胞のPTPN3発現を抑制して、誘導細胞数、抗原捕捉能、抗原提示関連分子の発現の解析を行った。その結果、未熟樹状細胞では、誘導細胞数、抗原捕捉能、抗原提示関連分子発現(CD80、CD86、CD40、HLA-ABC、HLA-DR)には有意の変化は認められなかった。しかし、成熟樹状細胞では、CD80、CD86発現が亢進する結果が得られた。この結果は非常に重要であるため、再現実験を繰り返している。成熟樹状細胞の誘導細胞数、HLA-ABC、HLA-DR発現には有意の変化は認められなかった。ここまでの結果から、成熟樹状細胞のPTPN3を抑制することで、抗原提示の共刺激分子発現が亢進する可能性が考えられ、癌免疫療法の治療効果改善に寄与することが示唆された。今後は、リンパ球への実際の抗原提示を行い、活性化リンパ球(CTL)の細胞傷害活性が亢進するかを検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
樹状細胞におけるPTPN3の生物学的役割の解析が実施でき、免疫治療効果を改善することが期待できる結果が得られている。
リンパ球への実際の抗原提示を行い、活性化リンパ球(CTL)の細胞傷害活性が亢進するかを検証する予定である。
vitroでの実験が、何度も実験を繰り返すことなく再現性が得られ、抗体などの使用が抑えられたことが要因と考えられる。今後、活性化リンパ球(CTL)の細胞傷害活性検証のためのサイトカインの購入に使用する予定である。
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