研究課題
本研究は、protein tyrosine phosphatase non-receptor type 3 (PTPN3)抑制治療がリンパ球のみならず、樹状細胞機能も活性化できる新たな癌免疫治療となり得るか検証する、ことを主目的とする。昨年度までの実験で、樹状細胞におけるPTPN3抑制は、樹状細胞のリンパ球活性化能を亢進している可能性が分かったので、本年度は、このIn vitroでの実験結果を免疫不全マウスを用いた系で治療実験を行うことにより再評価した。HLA-A24を持つ肺扁平上皮癌細胞株Sq-1の壊死lysateを、HLA-A24の被験者の末梢血単核球より誘導した樹状細胞に捕足させることにより、Sq-1刺激成熟樹状細胞を誘導し、さらにリンパ球と共培養させることによって、HLA-A24拘束性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し実験に使用した。Sq-1刺激成熟樹状細胞はPTPN3を抑制した群、抑制していない群の2種類を作成し、各々CTLを誘導した。免疫不全マウスにSq-1を皮下移植し生着後、誘導した2種類のCTLを腹腔内投与して治療実験を行った。その結果、PTPN3を抑制した樹状細胞を用いて誘導したCTLで治療した群が、PTPN3を抑制していない樹状細胞を用いて誘導したCTLで治療した群と比較して、有意に抗腫瘍効果が高かった。この結果はE/T比依存性であった。また、PTPN3抑制に伴う樹状細胞の活性化は、MAPK経路を経由している可能性も分かってきた。これらの結果は、PTPN3抑制治療が、リンパ球の活性化のみならず、樹状細胞の活性化にも寄与していることを示唆しており、新たな癌免疫治療開発に向けて極めて重要な情報を提供するものと考えている。
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