研究課題/領域番号 |
21K08682
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
影山 愼一 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (80194695)
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研究分担者 |
宮原 慶裕 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座教授 (10582083)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 食道癌 / がん免疫療法 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究は、食道癌の約50%に発現するMAGE-A4抗原を標的とするCAR-T療法の開発のために、既に臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞の形質解析、遺伝子発現、代謝物質の網羅的解析を行い、臨床試験の情報(有害事象、臨床効果、等)に関連するバイオマーカーの抽出を行うものである。 NY-ESO-1/TCR-T細胞輸注を実施し同意のもとで保管されているT細胞6検体を使用し、サイトカイン放出症候群(CRS)、臨床反応と製造TCR-T細胞、輸注後の末梢血TCR-T細胞の免疫細胞学的解析を行った。 Mass cytometryと36種のメタルタグ抗体のパネルを用い、輸注後の患者検体におけるTCR-T製品とその末梢血検体の解析の結果、すべての製造TCR-T細胞の不均一なT細胞マーカー発現が観察された。CRS発症検体のT細胞ではCD244とCD39の発現があり、一方、CRS発症のないT細胞では、両マーカーの発現が著明に低発現であった。高次元データを可視化するためUMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)を用いると、CRSの製造TCR-T細胞中のNY-ESO-1特異的T細胞の表現型は、2つの細胞クラスターにおいて主にCD244、CD39、CD45RAの発現上昇とCCR7の欠如によりの特徴づけされていた。どちらのクラスターも、CRSを発症していない製造TCR-T細胞には検出されなかった。NY-ESO-1特異的T細胞の形質発現プロファイルは、それぞれの患者へ末梢血においても維持され、CRSを発症した末梢血検体で、注入後4週間まで追跡したところ、同様の表現型が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞(NY-ESO-1)のフェノタイプ解析、免疫機能解析を実施し、臨床効果に関連する因子について推察できており、研究成果の方向性がおおむね確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞の解析数、解析項目を拡大し、2021年度の知見の精度を高めていく。さらにTCR-T細胞検体を使用して、臨床的に有効であった例での代謝マーカー(糖代謝、脂肪代謝)の探索解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はフェノタイプ解析・免疫機能解析の一部が実施しなかったため使用額が当初より減じた。この解析は次年度での実施となり、2022年度の解析計画は代謝マーカー(糖代謝、脂肪代謝)となり、それに見合う使用計画とする。
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