研究課題
本研究は、食道癌の約50%に発現するMAGE-A4抗原を標的とするCAR-T療法の開発のために、既に臨床試験で細胞輸注されたTCR遺伝子導入T細胞の形質解析、遺伝子発現、代謝物質の網羅的解析を行い、臨床試験の情報(有害事象、臨床効果、等)に関連するバイオマーカーの抽出を行うものである。NY-ESO-1/TCR-T細胞輸注を実施し同意のもとで保管されている臨床検体を使用し、サイトカイン放出症候群(CRS)、臨床反応と製造TCR-T細胞、輸注後の末梢血TCR-T細胞の免疫細胞学的解析を行った。Mass cytometryと36種のメタルタグ抗体のパネルを用い、輸注後の患者検体におけるTCR-T製品とその末梢血検体の解析の結果、すべての製造TCR-T細胞の不均一なT細胞マーカー発現が観察された。CRS発症検体のT細胞ではCD244とCD39の顕著な発現があり、一方、CRS発症のない症例のT細胞では、両マーカーの発現が低発現であった。高次元データを可視化するためUMAP(Uni form Mani fold Approximation and Projection)を用いると、CRSの製造TCR-T細胞中のNY-ESO-1特異的T細胞の表現型は、2つの細胞クラスターにおいて主にCD244、CD39、CD45RAの発現上昇とCCR7の欠如によりの特徴づけされていた。MAGE-A4/CAR-T細胞細胞の作製については、遺伝子導入に用いる新規ベクターを選定した。これはGITR細胞内ドメイン遺伝子を活性化シグナルとするCAR遺伝子導入用レトロウイルスである。ヒトT細胞に遺伝子導入し、免疫不全NOGマウスでのin vivo担癌モデルにおいて腫瘍増殖抑制を示していた。MAGE-A4抗原の発現を検出する免疫組織染色法を確立し、腫瘍組織において10%以上で染色される検体をMAGE-A4発現陽性と診断し、これまで食道癌で42.9%に発現陽性であることを見出した。
すべて 2023
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International Journal of Cancer
巻: 152 ページ: 2554~2566
10.1002/ijc.34453