研究課題
研究の全体構想は膵癌細胞の遠隔転移機構を明らかにして新規治療法を創出することである。膵臓がんは5年生存率が10%以下と固形がんで最も予後不良であり、遠隔転移や局所浸潤が予後を左右する。本研究では膵癌細胞が分泌するエクソソームに着目して初期の遠隔転移の分子機構を明らかにすることを目的とする。我々はすでに抗がん剤Gemcitabine(GEM)に耐性の膵癌患者から10種類の膵癌幹細胞株を樹立し、細胞外基質を再構築することで自己複製能を獲得することを報告し(PLoS One, 2013)、これらの細胞をマウスに移植した腫瘍でも抗がん剤Gemcitabineに対して耐性を持つことを示した(Pancreas, 2019)。一方、CD133陽性マウス膵臓組織幹細胞にGreen Fluorescent Protein、変異型KRASG12D、変異型p53、cyclin dependent kinase 4を遺伝子導入してマウス人工膵癌細胞(親株)を作成し、in vivoで作成した親株由来腫瘍にGEMを長期投与することにより、耐性を獲得した腫瘍からGEM耐性株を樹立した(投稿準備中)。本研究では、我々が樹立した①ヒト膵癌幹細胞株や②マウス人工膵癌幹細胞株由来のエクソソームを使って転移の初期段階の分子機構を明らかにする。まず、ヒト膵癌細胞株由来のエクソソームが膵癌細胞自身に上皮間葉転換を誘導することで転移の初期段階を再現できることを報告した。また、この分子機構にはTGF-b1が部分的に関与していることも明らかにした(Hori Y et al. Med Mol Morphol. 2022)。次に、エクソソーム投与後に癌細胞を移植することでin vivoにおいて転移が亢進することを報告した (Hori Y et al. Pancreatology 2023)。
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Pancreatology
巻: 23 ページ: 377-388
10.1016/j.pan.2023.04.002.