研究課題/領域番号 |
21K08686
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
有馬 浩太 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (10792616)
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研究分担者 |
石本 崇胤 熊本大学, 病院, 特任准教授 (00594889)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / microbiome / 大腸がん / 西洋型食生活 |
研究実績の概要 |
ヒト腸内細菌叢の総重量は肝臓に匹敵し、免疫や代謝など様々な影響を及ぼすことから1つの臓器とも例えられる。直接細菌と接することから悪性腫瘍の中でも大腸癌と強く関連することが示唆されている。本研究の目的は、大腸癌の危険因子として知られる西洋型食生活が腸内細菌叢を介して大腸癌発癌および進展に与える影響について大規模コホート研究を用いて検証し、そのメカニズムを明らかにすることである。 研究対象とする細菌としては、まず世界で初めて細菌による遺伝子変異原性が確認(Pleguezuelos-Manzano et al. Nature 2020、Dziubanska-Kusibab et al. Nature Med 2020)されたコリバクチン産生菌に注目した。その中でもコリバクチン産生酵素をコードするpks islandを有する細菌の中で、特にヒト大腸の中で圧倒的多数であるコリバクチン産生大腸菌(pks+ E. coli)に注目した。pks+ E. coliの検出にはqPCR法を用いた。研究協力者の荻野先生協力のもと、Harvard Medical Schoolで長期間追跡されたNurses’ Health StudyとHealth Professional Follow-up Studyの2つの大規模コホート研究で発生した大腸癌組織を用いてpks+ E. coliを測定し、1,175例中111例が陽性であった。西洋型食生活スコアによる大腸癌発生率を3,766,179人年のfollow up期間を用いて評価すると、西洋型食生活高摂取者は低摂取者と比較して、pks+ E. coli陰性大腸癌罹患率は1.1倍であった一方で、pks+ E. coli陽性大腸癌罹患率は3.45倍(Ptrend = 0.001、Pheterogeneity = 0.014)と有意に関連の強さの違いを認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたpopulation-based studyにおいて予想していた仮説と一致する結果を見出すことができた。引き続きcohort studyから得られた結果を元に追加解析を現在施行中である。これらのメカニズム解析をin vivoで併せて検討中である。これらより概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
大規模コホート研究より得られた知見を元に、そのメカニズム解明を引き続き主にin vivoを用いて行なっていく。薬剤性大腸腫瘍自然発症モデルマウスへ高脂肪食を摂取、かつpks+ E. coliを生着させ、pks+ E. coli感染の有無による腫瘍の癌化の頻度を確認する。表現系を評価したのち、形成した腫瘍に対してRNA sequencingを行い、トランスクリプトーム解析を行う。 また通常のin vivo実験に加え、オルガノイドを用いた表現系の検討も行なっていく。マウス大腸(正常粘膜または腫瘍組織)およびヒト大腸組織(正常粘膜または腫瘍組織)から採取した樹立したオルガノイドを用いて、pks+ E. coliをin vitroで感染させ、ヒト組織およびマウス組織による網羅的解析において同定したsignalを刺激し、癌化および腫瘍増大が確認できるか、またその中でもどの分子が最も重要なのかを解析・評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた旅費と人件費を使う機会がなかったため。次年度に合算して使用できる見込み。
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