研究課題
本研究は、難治性の慢性炎症性疾患である炎症性腸疾患(IBD)における、特に腸管臓器特異的血管内皮の性状とその機能、血管内皮障害に伴う内皮由来のアンジオクライン因子の動態解析、また血管内皮細胞内の転写因子を介した炎症性サイトカイン、ケモカインの産生、また他系統細胞、造血系や間葉系細胞等との相互作用を包括したIBD病態、疾患活動性の制御機構の解明を主な目的としている。今年度までに代表者らは、体外循環回路中にカラムを使用し、末梢血から好中球やマクロファージを吸着除去する顆粒球単球吸着療法(GMA)で、現在加療中の炎症性腸疾患(IBD)の患者検体、合計12検体を集積し、治療前後でのマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)、プラスミノーゲン、α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体の血中濃度を測定し、臨床症状や他の生化学データや炎症マーカーとMMP-9活性および血液凝固・線維素溶解系(線溶系)への影響について検討した。GMA治療において、治療効果のある症例ではMMP-9の活性は安定し、治療前の値よりも低下する傾向を確認している。体外循環療法直前直後の比較でMMP-9の値は、治療直後に有意な上昇を認め、プラスミノーゲンはGMA直後から減少しPICは増加する傾向を認めた。このことはプラスミノーゲンが活性化され、プラスミン生成が進み、MMP-9が活性化され、さらにカラムに活性化された白血球の吸着により、血中のMMP-9は上昇、さらに内皮障害と体外循環に伴う血管内皮に対する物理学的、ないしは生理学的ストレスも関与し、線溶系は亢進、アンジオクライン因子濃度が増加するものと考えられた。またGMAの終了時、カラム後の位置で、MMP-9の上昇傾向を認め、MMP-9は白血球の吸着効果を示すマーカーになることも示唆された。日本消化器病学会で発表を行い、現在論文作成中である。
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