研究課題/領域番号 |
21K08699
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研究機関 | 公益財団法人野口研究所 |
研究代表者 |
高田 美生 公益財団法人野口研究所, 研究部, 室長 (60867688)
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研究分担者 |
井手尾 浩子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (90180322)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ガレクチン-4 / 胃癌 / 腹膜播種 |
研究実績の概要 |
①一連の評価系構築や阻害効果の検討のために、組換えガレクチン-4タンパク質の調製を行った。ヒトガレクチン-4遺伝子をクローニングし、その全長ならびに2つの糖鎖認識ドメインCRDをそれぞれ発現する形で発現プラスミドを構築した。大腸菌にて発現させ、全長、N端側CRD、C端側CRDの3種組換えタンパク質を調製した。 ②ガレクチン-4機能の阻害を評価するために、一連の評価系整備を行った。結合評価系としてはプレート法を検討した。コレステロール硫酸あるいはアシアロフェチュインをコートしたマイクロプレートにガレクチン-4タンパク質と阻害候補物を添加して一定時間反応後、HRP標識したガレクチン-4抗体にてガレクチン-4量を検出した。細胞評価系としてはガレクチン-4を発現するヒト胃癌細胞株をマイクロプレートに播種し、翌日に細胞をPBSにて洗浄後に阻害候補物を添加した。3日間培養後、WST-8アッセイあるいはATPアッセイにて細胞数を計測した。 ③ガレクチン-4に対する特異的なsiRNAを創製し、ガレクチン-4の発現をノックダウンしてその効果を検討した。ヒト胃癌細胞株にガレクチン-4 siRNAを導入すると、ガレクチン-4の発現が抑制され、さらに細胞増殖が阻害されることが明らかとなった。またヒト胃癌細胞株を投与して胃癌腹膜播種を誘導したモデルマウスにガレクチン-4 siRNAを投与すると、腹膜播種形成が抑制される傾向が認められた。 ④低分子阻害剤に関する検討を開始した。ヒトガレクチン-4の共結晶構造から、計算科学的手法により特定のガレクチン-4アミノ酸残基と相互作用を増強する可能性のある修飾を見出した。この結果を元に阻害候補物である低分子化合物の合成に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業機関当初に計画した通り、概ね順調に推移している。ガレクチン-4組換えタンパク質の調製を行うと共に、各種評価系の整備を進めることができた。ガレクチン-4 siRNAの創製を行い、in vitroならびにin vivoでのガレクチン-4ノックダウンの効果を検討し、ほぼ期待通りの結果を得ることができた。低分子阻害剤については、計算科学的手法により阻害効果を期待できる低分子化合物を設計し、合成に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ガレクチン-4機能の阻害を評価するために、結合評価系として表面プラズモン共鳴法(SPR法)を検討する。調製した組換えガレクチン-4タンパク質を用いてSPR法を構築し、ガレクチン-4に対する阻害候補物の阻害活性を評価する。ガレクチン-4に対する特異性を評価するために、ガレクチン-3など他のガレクチンタンパク質を調製してSPR法に供する。またガレクチン-4の各CRDに対する阻害効果を評価するために、調製済みの2種のガレクチン-4 CRDタンパク質を用いてSPR法を検討する。 ガレクチン-4阻害候補物として、組換えガレクチン-4 CRDタンパク質を検討する。ガレクチン-4は2つのCRDを有して糖鎖と結合して様々な生理作用を発揮するものと考えられている。その2つのCRDを別々に発現させた組換えタンパク質は、もう一方のCRDやリンカー部分が無いことから生理作用を発揮することができずに阻害剤として働く可能性がある。胃癌細胞を用いた細胞評価系や腹膜播種を誘導した動物モデルにおいて、これらCRDの組換えタンパク質を添加することによる阻害効果について検討を加える。また、それ以外にもガレクチン-4に対する阻害効果が期待される物質について検討する。 着手した低分子化合物の合成を完了させ、そのガレクチン-4機能に対する阻害効果を検証する。評価系としては結合評価系にて詳細データを取得した後、細胞評価系にて阻害効果を検討する。さらに、動物での腹膜播種抑制効果の可能性についても検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通り使用することができたが、若干の次年度使用額として残ることになった。次年度分の助成金と併せて計画通り活用していきたい。
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