研究課題/領域番号 |
21K08702
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
海老原 裕磨 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (50632981)
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研究分担者 |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
野路 武寛 北海道大学, 大学病院, 助教 (10739296)
田中 公貴 北海道大学, 大学病院, 助教 (10758642)
李 黎明 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 客員教授 (70316298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光内視鏡 / 腹腔鏡 / 転移診断 / 光線力学的診断 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新規腹腔鏡用蛍光スペクトル測定システムを用いた光線力学的な術中転移診断法を確立することである。これまでの検討において、従来の蛍光観察装置による目視では蛍光発光につき判定不可能であった2μM/L以下のprotoporphyrin IX (PPIX)溶液に対し、本システムでは蛍光スペクトル表示ならびに蛍光強度測定が可能であった。この結果については、英文論文として報告を行った(Photodiagnosis Photodyn Ther. 2021)。また、本システムの臨床導入を目的に「消化器悪性腫瘍に対するスペクトル測定を併用した光線力学診断の臨床試験」を北海道大学病院にて開始した。臨床使用を想定して、蛍光強度をカラーバーによる画面表示と電子音の高低にて、術者が認識できるよう機器改良を行った。本改良より、術者が視覚的ならびに聴覚的に蛍光強度の認識が可能となる。本臨床試験では、腹膜播種病変ならびにリンパ節に対し、体腔外での蛍光スペクトル測定を行っている。その結果、目視にて蛍光認識が不可能であった腹膜播種病変において、蛍光スペクトル測定が確認できるなど、術中転移診断に臨床応用の可能性を示唆する結果を得た。現在までに8症例に対し体外での蛍光スペクトル測定による光線力学的転移診断を施行し、3例において目視による診断不可能病変に対し、蛍光スペクトル測定による転移診断が可能であった。今回の検討により、新規腹腔鏡用蛍光スペクトル測定システムは、従来の蛍光観察装置を用いた目視判断が困難である転移病変に対して診断が可能となることがわかった。そのため、悪性腫瘍手術における新規転移診断法として、その学術的意義が高いと考えられる。今後は、蛍光プローブ部分(腹腔鏡部分)の医療機器承認を得たのちに、光線力学的な術中転移診断法確立につき検討を続けていく予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
システム本体の医療機器承認はすでに得ているが、体腔内に入る蛍光プローブ部分(腹腔鏡部分)の医療機器承認(Class B)が得られておらず、進捗状況を「やや遅れている」と判断した。現在、医療機器承認に必要な各種培養試験ならびに滅菌耐久性試験について、既に終了しており承認を待っているところである。当初の研究計画では、2021年12月に医療機器承認を予定していたが、上記のため2022年4月中の医療機器承認を目指している。今後、4月中の承認が得られれば、5月以降からの臨床試験が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光プローブ部分(腹腔鏡部分)の医療機器承認が得られ次第、腹腔内における光線力学的転移診断能を検証する臨床試験を継続する予定である。承認待機期間において摘出標本に対して、本システムの画像処理遅延やスペクトル解析ソフトウェアについての実証実験は終了している。また現在、蛍光薬剤であるインドシアニングリーン (indocyanine green: ICG)を用いた本システムによる検証実験も同時に行っている。その結果として胃壁モデルを用いた動物実験において、従来の蛍光観察システムに比べ、蛍光スペクトル測定を行うことで、胃壁深部における蛍光信号検出が可能であることを証明し、英文論文として報告してた(Ebihara Y, et al. J Minim Access Surg. 2022) 。さらに体腔内の脂肪組織や肺などの動物モデルを用いて、各組織における蛍光測定可能な深度につき、検出確認の実験を行っている。本システムにおける測定限界濃度実験も同時に施行している。本検討では、目視による判断不可能であるICG濃度(2.5x10-5mg/mL)においても蛍光スペクトル測定が可能であることが確認できており、今後の臨床試験に対する、蛍光薬剤濃度の条件設定の検証を行っている。現在、臨床応用に則した機器改良も行っており、蛍光プローブ部分の医療機器承認と同時に、臨床導入できる体制を整えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入・使用予定の試薬がコロナ禍の影響により製造休止(欠品)、納品遅れ状態が続いたため次年度への繰越金が生じた。また、一部医療機器承認が得られていないものがあり、承認が下り次第遅れている臨床試験を次年度に行う予定である。
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