研究課題
直腸癌に対する術前化学放射線療法（Chemoradiotherapy: CRT）で臨床的完全奏効が得られた症例に対して、積極的に非手術を選択する治療戦略（Watch and Wait: W&W）が注目されている。本研究の目的は、「直腸癌に対するCRT後のW&Wにおいて、個々の遺伝子変異に基づいた新しいサーベイランスの研究基盤を確立すること」である。学術的独自性は、個々の癌の遺伝子変異に基づいたサーベイランスの可能性を検討する点とVariant call formatを使用してバイオインフォマティクス解析を行う点である。創造性は、直腸癌に対するCRTにおいて、個々の遺伝子変異および遺伝子発現をバイオマーカーとした治療およびサーベイランスの個別化への発展が期待できる点である。全ゲノム解析およびトランスクリプトーム解析等を実施してゲノムデータを取得し、CRTの治療効果予測およびW&Wのサーベイランスにおいてターゲットとなるゲノム異常を探索した。遺伝子変異データを用いてpathway解析およびmutational signature解析を実施し、病理学的完全奏効（ypCR）症例と非ypCRまたはW&W後に再増殖が見られない症例における遺伝子変異の特徴を解析した。遺伝子発現データを用いてpathway解析およびgene ontology解析を行い、ypCR症例と非ypCR症例における遺伝子発現の特徴を解析した。MAPKシグナル伝達経路の異常および腫瘍変異負荷量に着目して、CRTの治療効果との関連を解析し、CRTの治療効果予測およびW&Wのサーベイランスのターゲットとなり得る遺伝子異常の候補を見出した。
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