研究課題
1)臨床検体においての膵癌集学的治療効果の予測バイオマーカーについての検討を行った。膵癌の切除標本におけるtumor budding (TB)は評価方法は確立されておらず、また化学放射線療法 (CRT)後の切除標本におけるTBの意義は不明であるため、CRT後膵癌切除標本におけるTBの意義につき検討した。2012/2~2020/12に膵癌の診断でCRT後膵切除に至り、詳細な検討が可能であった154例を対象とした。化学療法はS1+GEM、放射線治療は45または50.4Gyとした。切除標本のH&E染色プレパラートにおいて、腫瘍辺縁のbudding密度が最も高くなる先進部で、1mm2中のTB個数をカウントした。治療開始前因子、周術期因子、病理学的因子の各因子が疾患特異的生存率(DSS)におよぼす影響につき、単変量および多変量cox回帰分析にて検討した。TB数(中央値)は4 (範囲: 0-60) (個/mm2)、TB無vs.有はそれぞれ40 vs. 114例 (26/74%)であった。単変量解析にてDSSに及ぼす因子は、PS、放射線照射量、術前CA19-9、術前腫瘍径、術前PV/SMA浸潤、出血量、顕微鏡的腫瘍径、静脈侵襲、神経浸潤、膵外神経叢浸潤、癌遺残度、組織学的治療効果、TBの14因子であった。この14因子を用いた多変量解析で、PS 2-3(P=0.018)、術前CA19-9(P=0.007)、術前PV浸潤有り(P=0.024)、TB有(P=0.021)の4項目が独立予後因子として同定された。CRT後の膵癌切除標本において、腫瘍辺縁TBの存在は独立予後不良因子である。2)in vivo:生後8週のICR SCID mouseに未治療と治療後のヒト膵臓腺癌細胞(Panc-1)を皮下移植し、移植可能可動化の判定を行い、膵内、脾被膜下、腹腔内に注入し、局所膵癌、肝転移、腹膜播種モデルを作成を試みているが、研究途中である。
3: やや遅れている
動物実験が遅れている。研究体制を再構築している。
動物実験などが遅れている。臨床検体を有効活用して研究を継続したい。
特に動物実験での研究の進捗状況が芳しくなかったことなどが理由で、次年度使用額が生じた。今年度も、必要な実験動物と試薬を購 入する計画である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Surg Today.
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10.1007/s00595-023-02651-7
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10.1016/j.hpb.2023.06.015