研究課題/領域番号 |
21K08708
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬尾 智 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70646546)
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研究分担者 |
鶴山 竜昭 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 腫瘍研究部, 研究員 (00303842)
中川 貴之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30303845)
川口 博明 北里大学, 獣医学部, 教授 (60325777)
田浦 康二朗 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80378629)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | FOLFOX誘導性SOS予防 / トロンボモジュリン / Bevacizumab / ブタSOSモデル |
研究実績の概要 |
Sinusoidal obstruction syndrome(SOS)は,大腸癌化学療法に起因する肝障害で、肝転移に対する集学的治療において問題となる.我々は,ヒトで大腸癌に対して用いられているFOLFOX療法(oxaliplatin + 5-FU + Leucovorin)をブタに投与することで,FOLFOX誘導ブタSOSモデルを世界で初めて確立し,現在報告準備中である.本研究は,遺伝子的・解剖学的にヒトに近いとされるブタSOSモデルを用いて,ヒトSOSに対して予防効果が報告されている薬剤を併用した場合に,実際に予防できるか否かを経時的な肝生検で確認し,薬剤の至適投与量や至適投与期間を固定して実臨床での使用に迅速に結びつけることと,SOS発生のメカニズムを明らかにすることを目的とした. 当初の計画では,トロンボモジュリンによるSOS予防効果を検証する予定であったが,昨年度の研究(18K08645 ブタモデルを用いた化学療法誘導性肝障害の薬物による克服~大腸癌予後改善に向けて~)の遅れもあり,予防薬を変更して,BevacizumabによるSOS予防効果の実験を行った. 12ヶ月月齢の雄性マイクロミニブタを使用し,ヒトで大腸癌に対する化学療法レジメンFOLFOX + Bevacizumab 療法の50%投与量で,ヒトと同様の投与スケジュールで行った.観察期間は24週とし,FOLFOXは2週毎に計12回皮下ポートより投与した.FOLFOX投与時に血液検査を,0・4・8・12・18・24週に開腹肝生検を行った.得られた血液・肝臓標本にてSOSの評価を経時的に追求する.肝臓病理標本に関しては,SOSの診断で主に用いられるスコアリングを中心に,病理医および獣医と検証し,妥当性を検証した。 本年度はFOLOX+Bevacizumab群を1頭行い,観察期間24週のうち18週まで完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言や、京都大学独自の感染対策によって、当初予定していた実験時間の確保が困難であり、研究の進捗はやや遅れている状況である。 本年度は,FOLFOX + Bevacizumab療法を雄性12か月のマイクロミニブタ1頭に対して施行することに成功した。観察期間は24週の予定で,18週まで終了している.プロトコールに従って経時的な開腹肝生検を行い、18週までのサンプルで肝障害の評価を行ったところ、FOLFOX投与群と比較してFOLFOX + Bevacizumab群では電子顕微鏡による評価でSOSの予防効果を認めた。またAST・ALT・T-Bil・Hb・血小板値では経時的に著名な変化を認めず、肝障害を示す所見は認めなかった。またICG(インドシアニングリーン)という色素を投与して、15分後の排泄率によって肝機能の評価を行うICG検査でも肝機能の悪化を認めず、BevacizumabによるSOS予防効果が示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、FOLFOX+Bevacizumab群の頭数を増やし,さらにトロンボモジュリンによるSOS 予防効果についても検討していく予定である. 現時点での遅れを取り戻すためには,同時に行える実験ブタの頭数を増やすことが必要であるが、複数の研究者の協力が必要となることが課題であると考えている.この課題については,過去に行ったFOLFOX群の結果を参考に,開腹肝生検の回数を可能な限り減らし,開腹手術ではなく経皮的針生検を代わりに用いるといった工夫を行うことで克服出来ると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言や、京都大学独自の感染対策によって、当初予定していた実験時間の確保が困難であり、研究の進捗は遅れている状況である。この為、予定していた研究費に余剰が生まれる状況になった。
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