研究課題/領域番号 |
21K08709
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤野 志季 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (10768956)
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研究分担者 |
木戸屋 浩康 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00543886)
三吉 範克 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20528624)
伊藤 彩 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, がん医療創生部 非常勤研究員 (30864962)
長江 歩 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (90850272)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 初代培養 / 癌幹細胞 / 大腸癌 / 癌微小環境 / 免疫抑制 |
研究実績の概要 |
臨床における癌の多様性の構築、また癌幹細胞の維持には、生体内において腫瘍を取り巻く血管や間質、線維芽細胞、免疫細胞等による癌微小環境が複雑な相互作用の中で重要な役割を果たすものと考えられる。これまでの研究で、臨床組織から分離した癌細胞の中でも、幹細胞性の高い集団を高率に維持培養した初代培養細胞(isolated tumor-derived cancer cells, iCCs)をマウスに移植し形成させた腫瘍を解析したところ、マウスの組織を引き込んで間質組織や腫瘍血管から成る癌微小環境を再構築させることができていた。さらに、赤色蛍光にて標識させたiCCを作製し、マウス腫瘍モデルより、ヒトiCC由来細胞(癌細胞)と、マウス由来細胞(癌微小環境を構成する細胞)を明確に分離し、これらをシングルセルRNAシーケンスにて解析したところ、幹細胞性の高い集団、治療抵抗性の高い集団が同定された。また、癌細胞の擬似系列解析により、腫瘍組織が構築される上で重要となる分子として免疫抑制分子が幹細胞マーカーとともに発現していることを特定した。癌幹細胞は免疫抑制分子を発現することにより、自己免疫から逃れて転移を引き起こしている可能性がある。また、免疫を逃れた癌幹細胞が他臓器転移を引き起こす際の最初の段階として必要な細胞間の接着を、Wntシグナル経路の阻害により抑制できることを示した。癌幹細胞が免疫細胞や間質細胞などの周囲環境をどのようにコントロールし転移を引き起こしているかの一端を解明し、また新たな治療ターゲットとしての可能性を示した。
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