食道切除を受けた患者305人の血液検体を用いて代表的な4種の歯周病菌(Porphyromonas gingivalis、Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Prevotella intermedia、Tannerella forsythia)にFusobacterium nucleatum (F.n)を加えた5種の歯周病菌に対する血清Ig-G抗体価をELISA法にて測定した。 F.nの血清抗体価のみが予後と相関することが判明したため、以後IgG-F.n血清抗体価と臨床病理学的特徴、口腔状態および予後との関係を解析した。305人の患者のうち、124人(40.7 %)がIgG-F.n血清抗体価高値であった。高値群と低値群間で臨床的特徴に有意差はなかった。高値群は全生存期間(OS)(P = 0.0011)およびがん特異的生存期間(CSS)(P =0.0081)の低下と関連していた。 多変量解析により、IgG-F.n高値はCSS不良と独立して関連していることが示された(HR 1.74、95% CI (1.17-2.59)、P = 0.007)。さらに術前化学療法群における奏効率や予後などのサブ解析を行ったところ単変量、多変量ロジスティック回帰分析により、IgG-F.n高値が術前化学療の非奏功を示す独立した因子であることが示された(OR 2.32、95% CI 1.08-4.99; P = 0.0311)。以上よりFusobacterium nucleatumに対する血清IgG抗体価は有意な予後予測因子であり、術前化学療法に対する非奏功を予測するバイオマーカーとしての重要な役割を示唆した。
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