研究課題/領域番号 |
21K08714
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
野元 大地 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (70895408)
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研究分担者 |
馬場 祥史 熊本大学, 病院, 特任准教授 (20599708)
岩槻 政晃 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50452777)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Fusobacterium nucleatum / ESCC / NOD / NF-κB |
研究実績の概要 |
①食道癌臨床検体を用いた実験、②In vitroにおける共培養実験、③In vivoモデルにおける検証の3つについて並行して研究を行っている。現時点では主に①、②について研究を中心に進めている。①食道扁平上皮癌切除検体を用いた免疫染色において、F. nucleatum陽性症例で陰性症例と比較しリン酸化NF-κB蛋白発現率が有意に高く、F. nucleatum陽性症例でのNF-κB活性化が示唆された。②NF-κB遺伝子をノックダウンしたヒト食道癌細胞株をF. nucleatumと共培養した上で、機能解析を行い、癌細胞の増殖能の変化を確認したところ、F. nucleatumによる癌細胞の増殖能亢進効果が抑制され、F. nucleatumがNF-κB活性化を介して癌細胞増殖能を亢進させていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①については免疫染色の実験が完了している。 ②については、NF-κBの上流に存在するNODをノックダウンした食道癌細胞株を用いて、F. nucleatumとの共培養実験を進めているところである。 ③については、ヒト食道癌細胞株とF. nucleatumをヌードマウスに皮下移植するXenograft modelの条件設定が済んでおり、今後vivoでの実験を進めていく段階である。
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今後の研究の推進方策 |
①については、F. nucleatum陽性症例と陰性症例での臨床病理学的因子の違いについて、当科の食道扁平上皮癌切除症例データベースを用いて検証する。 ②については、NOD遺伝子をノックダウンした食道癌細胞株をF. nucleatumと共培養することで、ヒト食道癌細胞に おけるNF-κBの活性化が阻害されるかどうか、Western blotおよび蛍光免疫染色で評価する。さらに食道癌細胞の増殖能・浸潤能・遊走能の変化についても評価する。 またNF-κB活性化に伴って、種々のサイトカイン、ケモカイン産生が起こることが報告されているが、DNA microarrayの結果から産生亢進が予想されるサイトカインやケモカイン(TNF-α, IL-32, IL-36γ, CCL20, CXCL2など)について、発現量の変化をcytokine arrayやELISAで確認する。 ③については、作成したXenograft modelを用いて、腫瘍増殖能の変化、および腫瘍におけるNF-κB活性化やNOD発現について確認を行う。さらに今後の臨床応用を考慮し、F. nucleatumに対して感受性のある抗菌薬(ゲンタマイシンおよびメトロニダゾール)を投与した条件下で、 F. nucleatumによる腫瘍増殖効果が抑制されるかどうか評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により学会開催形式がハイブリッド開催へ変更となる事が多く出張が減った為、未使用額が生じた。
使用計画:試薬、消耗品の購入費に充てたいと考える。また、試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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