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2022 年度 実施状況報告書

肝癌関連線維芽細胞エクソソームmiRNAの分子生物学的機序解明と革新的治療の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K08718
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

池上 徹  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80432938)

研究分担者 後町 武志  東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40338893)
恩田 真二  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10459620)
古川 賢英  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80624973)
春木 孝一郎  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60720894)
白井 祥睦  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10785364)
安田 淳吾  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90896870)
塩崎 弘憲  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30896816)
田中 真二  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30253420)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード肝細胞癌 / エクソソーム / miRNA
研究実績の概要

進行肝細胞癌における進展転移における癌微小環境の重要な構成要素である癌関連線維芽細胞(CAF)に注目した。CAFの上清あるいは分離したエクソソームを肝癌細胞株であるHuh7に添加を行ったところ、CAFから分離したエクソソームの添加が、非癌部肝組織から抽出したNFに比し、あきらかに肝癌細胞株の運動性すなわち浸潤進展性を高めていることをMigration assay、Invasion assayにて確認できた。正常肝細胞、星細胞、正常線維芽細胞およびCAFにてmiRNA-150の発現量を定量的RT-PCRを行ったところ、CAFおよびCAF由来エクソソームでmiRNA-150の発現低下を認めた。さらにCAF関連エクソソームと共培養した肝癌細胞株Huh7およびHep3BではmiRNA-150の高発現をみとめた。またSYTO0染色されたエクソソームと24時間共培養したHuH7では明らかな陽性蛍光染色をみとめ、HuH7とHep3B細胞の浸潤転移活性はmiR-150由来含有エクソソームのトランスフェクションにより阻害されることが明らかとなった。臨床検体においては、82症例の肝細胞癌患者において血清miRNA-150発現量をRTPCRにて定量したところ組織学的に線維化が進行している症例においてmiRNA-150の発現が低下していることが明らかとなった(62.1% vs. 35.9%, p=0.02)。miRNA-150低値群では肝細胞癌結節被膜浸潤がより低度であり(72% vs. 88%, p=0.03)、recurrence free survival rateがより低下していた(p<0.01)。多変量解析では、miRNA-150低発現、男性、低アルブミン、高AFP値、肝内転移が有意な予後不良因子であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CAFの上清あるいは分離したエクソソームを肝癌細胞株であるHuh7に添加を行ったところ、CAFから分離したエクソソームの添加が、非癌部肝組織から抽出したNFに比し、あきらかに肝癌細胞株の運動性すなわち浸潤進展性を高めていることをMigration assay、Invasion assayにて確認できた。一方、肝細胞株の増殖能を促進する効果は現時点の実験系では認められなかった。背景肝に線維性病変を伴う肝細胞癌であっても、CAFが明らかに存在し、分泌されたエクソソームにより肝細胞癌細胞の上皮間葉転換につながる性質を獲得していることを示唆する結果であった。エクソソーム内miRNAの網羅的解析(miRNAマイクロアレイ)を行ったところ、miRNA-150、miRNA-320、miRNA-355、miRNA-1247、miRNA-3188が肝癌細胞に影響を与える候補として検出された。次にヒト正常肝細胞、星細胞、正常線維芽細胞およびCAFにてmiRNA-150の発現量を定量的RT-PCRを行ったところ、CAFおよびCAF由来エクソソームでmiRNA-150の発現低下を認めた。臨床検体においては、82症例の肝細胞癌患者において血清miRNA-150発現量をRTPCRにて定量したところ組織学的に線維化が進行している症例においてmiRNA-150の発現が低下していることが明らかとなった(62.1% vs. 35.9%, p=0.02)。miRNA-150低値群では肝細胞癌結節被膜浸潤がより低度であり(72% vs. 88%, p=0.03)、recurrence free survival rateがより低下していた(p<0.01)。上記より計画通りのプロセスを順調におこなっていることができている。

今後の研究の推進方策

エクソソーム内miRNAの網羅的解析に関してMulti-experiment viewerを用いて有意となった遺伝子群のうち、Target scan、Linked omics、miRDB、Exiquonより共通で検出される遺伝子に関して検証を行う。さらにマイクロアレイおよびデータベース解析から最も有意であると判定されたmiRNAを、単離しCAFに強制発現させる。RT-PCRにて発現を検証したのち、強制発現CAF由来エクソソームを分離、肝癌細胞株に添加する。SYTO RNA selectによりmiRNAが肝癌細胞株に結合し取り込まれていることを蛍光により確認する。MigrationおよびInvasion assayを行い癌の進展に影響を与えるかを確認する。一方標的miRNAに対するsiRNAをデザインし、抑制実験も同様に行う。標的miRNAが結合し影響を与えるターゲット遺伝子の同定を行い、相補的配列を有している癌関連遺伝子を検索する。NF/CAFから抽出したエクソソームを肝癌細胞株に添加することによりそのターゲット遺伝子のRNAおよび蛋白発現が変化していることをRT-PCRおよびwestern blottingにて確認を行う。これによりターゲットが確定されれば、ノックダウンあるいは遺伝子導入による肝癌細胞の動向をMigrationおよびInvasionassay評価を行う。

次年度使用額が生じた理由

当該年度は新型コロナ感染症が終息していると予想して学会発表を中心とした支出を大きめにみつもっていましたが、web発表が多くB-Aが0より大きい結果となりました。本年度は学会活動への出費が増加すると予想しています。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Sustained Systemic Inflammatory Response Predicts Survival in Patients with Hepatocellular Carcinoma After Hepatic Resection.2023

    • 著者名/発表者名
      Haruki K, Taniai T, Yanagaki M, Furukawa K, Tsunematsu M, Onda S, Shirai Y, Matsumoto M, Okui N, Ikegami T.
    • 雑誌名

      Ann Surg Oncol

      巻: 30 ページ: 604-613

    • DOI

      10.1245/s10434-022-12464-6.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical significance of cachexia index in patients with hepatocellular carcinoma after hepatic resection.2022

    • 著者名/発表者名
      Akaoka M, Haruki K, Taniai T, Yanagaki M, Igarashi Y, Furukawa K, Onda S, Tsunematsu M, Shirai Y, Okui N, Gocho T, Ikegami T.
    • 雑誌名

      Surg Oncol.

      巻: 45 ページ: 101881

    • DOI

      10.1016/j.suronc.2022.101881.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Significant impact of cachexia index on the outcomes after hepatic resection for colorectal liver metastases.2022

    • 著者名/発表者名
      Tanji Y, Furukawa K, Haruki K, Taniai T, Onda S, Tsunematsu M, Shirai Y, Yanagaki M, Igarashi Y, Ikegami T.
    • 雑誌名

      Ann Gastroenterol Surg.

      巻: 6 ページ: 804-812

    • DOI

      10.1002/ags3.12578.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inhibition of lysosomal acid β-glucosidase induces cell apoptosis via impairing mitochondrial clearance in pancreatic cancer.2022

    • 著者名/発表者名
      Yanagaki M, Shirai Y, Shimada Y, Hamura R, Taniai T, Horiuchi T, Takada N, Haruki K, Furukawa K, Uwagawa T, Kobayashi H, Ikegami T.
    • 雑誌名

      Carcinogenesis.

      巻: 43 ページ: 826-837

    • DOI

      10.1093/carcin/bgac060.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Preoperative cachexia index can predict the prognosis of extrahepatic biliary tract cancer after resection.2022

    • 著者名/発表者名
      Hamura R, Haruki K, Shirai Y, Tanji Y, Taniai T, Okui N, Furukawa K, Shiozaki H, Onda S, Ikegami T.
    • 雑誌名

      Surg Oncol.

      巻: 44 ページ: 101825

    • DOI

      10.1016/j.suronc.2022.101825

    • 査読あり
  • [学会発表] 生体肝移植におけるグラフト選択方法を再考してみる2022

    • 著者名/発表者名
      池上 徹
    • 学会等名
      日本外科学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Hepatic resection for recurrent HCC2022

    • 著者名/発表者名
      Ikegami Toru
    • 学会等名
      The 31st Conference of the Asian Pacific Association for the Study of the Liver
    • 招待講演
  • [学会発表] 生体肝移植の適応と戦略の変化~九州大学での学びから慈恵医大の変革へ~2022

    • 著者名/発表者名
      池上 徹
    • 学会等名
      ウイルス肝炎・肝疾患治療研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 肝癌に対する外科治療における最近の変化2022

    • 著者名/発表者名
      池上 徹
    • 学会等名
      第42回 日本分子腫瘍マーカー研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] パラダイムシフトを迎える肝癌に対する外科治療2022

    • 著者名/発表者名
      池上 徹
    • 学会等名
      第60 回日本癌治療学会学術集会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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