癌患者に対し効果のある抗癌剤を的確に選定し使用する個別化医療(precision cancer medicine)を行うためには、個々の患者に対し正確な抗癌剤感受性評価を行う必要がある。我々は患者由来腫瘍をマウスの同所へ移植する動物モデル(PDOX: Patient Derived-tumor Orthotopic Xenograft)に着目し研究を行ってきた。本研究では、PDOXモデルを用いた抗癌剤感受性試験結果が患者の実際の治療効果を反映するかを検証し、システムの実臨床への応用を目指す。本研究結果は直ちに臨床応用が可能であり研究結果を患者へ還元できると共に、今後の新薬開発や新規治療法の開発への応用を含めた産業化に繋がることが期待される。 これまでに我々は東北大学病院総合外科にて手術を受けた患者より同意取得後、膵癌、肝門部胆管癌、遠位胆管癌、十二指腸乳頭部癌、胆嚢癌、十二指腸癌などの患者由来腫瘍を採取した。それらの患者由来腫瘍を免疫不全マウスへ皮下移植し患者由来腫瘍移植モデル(PDX: Patient Derived-tumor Xenograft)の作成を試みた。結果膵癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌、十二指腸癌症例において皮下移植片の生着を認めた。生着した腫瘍は別の複数の免疫不全マウスへ皮下移植し継代が可能であることを確認している。皮下にて生着した腫瘍を免疫不全マウスの同所へ移植しPDOXの作成に当たっている。 これまで十二指腸乳頭部癌、十二指腸癌症例でのPDOXモデル作成の報告はない。解剖学的に複雑な部位であり、外科的な移植手術の難易度が高いことが原因として挙げられる。我々は日常診療における解剖学的知識、手術技術等を駆使し十二指腸乳頭部癌の患者由来腫瘍をマウスのVater乳頭部へ同所移植する術式を確立させた。本術式は未だ他からの報告はなく新規性の高い術式である。
|