研究課題/領域番号 |
21K08729
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
奥村 知之 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (10533523)
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研究分担者 |
寺林 賢司 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (20509161)
藤井 努 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (60566967)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血液循環腫瘍細胞 / リキッドバイオプシー / CTC / AI / 画像解析 / 食道癌 |
研究実績の概要 |
1.食道癌細胞株KYSEを用いたAI画像解析によるCTC検出アルゴリズムの作成: KYSEと単核球PBMCの画像を教師データとして事前学習し、各細胞画像がKYSEかPBMCかを判定させた。AIはKYSE140では99.8%、KYSE1440では100%の精度で識別した。KYSE140を事前学習したAIと4人の研究者に、EpCAMおよびDAPI染色した細胞100画像3セットを識別させたところ、AIとヒトの平均画像認識精度は100%および91.8%であった(p=0.01)。画像100 枚の識別に要した平均時間は、AIが0.7±0.01 秒、ヒトが630.4±49.5 秒であ(p=0.01)、CTC画像解析にAIを使用することでヒトと比較して高い分類精度と短時間での解析できる可能性が示された。 2.食道癌患者血液を用いたCTC捕捉とAI解析による癌細胞識別アルゴリズムの確立: 倫理承認とインフォームドコンセントのもと、男性5名、女性5名を対象症例、健常ボランティア5名を陰性対照とした。EpCAM陽性/DAPI陽性細胞は、患者群と対照群の両者で検出されたが、患者群の検出数は平均44.5±20.9個であり、対照群の平均2.4±0.8個に比べて有意に多かった(p=0.02)。これらの結果から細胞株を用いて構築したAIアルゴリズムを用いて患者血液検体からCTCを検出できる可能性が示された。 3. ヒト癌細胞を用いたマウスCTCバイオアッセイモデルの確立:ヌードマウスの胃壁内にヒト胃癌細胞株を移植し、6週間後に胃、肝を摘出した。25匹中16匹(64.0%)で胃壁内腫瘍を認め、8匹(32%)で肝転移を認めた。胃壁内腫瘍および肝転移についてはヒト特異的EMAの発現によって移植したヒト癌細胞由来であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
KYSEをGFP標識したものを血液に混和したうえで密度勾配遠心によって単核球層を採取し、捕捉した細胞を用いて、EpCAM/DAPI蛍光染色を行い、限界希釈による細胞回収率を計測することでCTC捕捉条件を最適化し、また画像撮影の際のサンプル量、露光時間の設定、EpCAMの輝度が20以上のものをピックアップして絞り込みを行い、さらに700画素以上のDAPI陽性、EpCAM陽性の領域を除外するなど背景処理の最適化などに予定以上に時間を要したが、各条件の最適化によって安定した画像取得と解析が可能となり、ヒト血液を用いた解析やマウスモデルの作成に進むことができた。マウスへの腫瘍細胞移植実験については、計画書を提出し富山大学動物実験委員会の承認を得た。
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今後の研究の推進方策 |
1.食道癌細胞株KYSEを用いたAI画像解析によるCTC検出アルゴリズムの作成:細胞株を用いたAI画像解析アルゴリズムは既に完成しており、今後は以下の2,3の研究を進める。 2.食道癌患者血液を用いたCTC捕捉とAIによる癌細胞識別アルゴリズムの確立: これまでに行った10例の結果をもとに、細胞株を用いた条件設定をヒト血液を用いた設定に最適化を行ったうえで、50症例のデータを蓄積し、臨床病理学的因子との相関を検証を進める。 3.ヒト癌細胞を用いたマウスCTCバイオアッセイモデルの確立:これまでに作成したマウス肝転移モデルを用いて血液を採取し、単核球層を採取し、上記AI画像解析アルゴリズムを用いてCTCを検出し、分子生物学的機能解析との相関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
CTC捕捉条件および画像取得、処理条件の最適化に時間を要したことから、当初予定であった癌患者60例の血液サンプルを用いたCTC採取と画像解析が10例にとどまっており、今年度に残る50例の解析を進める予定となった。また、マウスCTCモデル作成においても肝転移モデル作成が確立した段階であり、CTC採取と解析はこれからである。そのため今年度に持ちこした研究費を使用して研究計画を完遂させる。
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