研究課題/領域番号 |
21K08730
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
雨宮 秀武 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (70377547)
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研究分担者 |
河野 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任准教授 (40322127)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マクロファージ / M-CSF / 肝細胞癌 / ジエチルニトロソアミン / M-CSF受容体拮抗剤 |
研究実績の概要 |
【目的】肝細胞癌(HCC)発症と進展における、背景肝に発現するマクロファージ(Mφ)成熟因子であり炎症のマーカーであるM-CSFの関与と、M-CSF受容体抑制剤のHCC増殖・発癌抑制効果を検討した。 【方法】I:M-CSF欠損(op/op)とlittermateマウス(LT)にジエチルニトロサミン(DEN)を投与し肝発癌率と肝内のM1-type Mφ/M2-type Mφ比および血管新生因子(VEGF)発現を検討した。II:手術標本でM-CSF・新生血管発現、M2Mφ分布と、手術後の生命予後を解析した。III:分離肝Mφと単球を、M-CSF存在下で共培養しVEGF産生、血管内皮細胞(VEC)増殖を検討した。IV:マウスHCC株MH134を同系マウスへ皮下移植モデル、ヒトHCC細胞株(Huh-7)のヌードマウス脾臓移植モデル、さらに炎症性肝発癌モデルであるDEN誘発肝癌モデルを作成し、M-CSF受容体拮抗剤GW2580の投与効果を検討した。 【結果】I:op/opで発癌率がLTと比較し有意に低下。DEN投与後のop/opで腫瘍周囲のM1/M2 Mφ比と血管新生がLTと比較し有意に減少した。II:M-CSF、新生血管発現の高発現群においてDFSが有意に短縮していた。M-CSF発現は独立した予後因子であった。III:肝Mφと単球は、M-CSF存在下でM-CSF濃度依存性にVEGFを産生し、肝Mφで有意に亢進していた。VECはM-CSFと肝Mφの共培養条件下で増殖が最も亢進していた。 IV:マウスHCC株ならびにヒトHCC細胞株においてGW2580投与により腫瘍増殖が有意に抑制した。さらに、DEN肝発癌モデルにおいてもGW2580投与で有意に肝発癌を抑制した。 【考察】M-CSFを分子標的とするHCC新規個別化治療の可能性を示唆する結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度予定している検討は90%程度終了できた。マクロファージ活性化抑制の検討と、腫瘍発症への関与の機序の検討がすべて終了できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に予定している中鎖脂肪酸による肝マクロファージの活性化抑制機序の解明と、腫瘍抑制効果の機序に関する検討を行い、今後は、M-CSF受容体拮抗剤の投与効果に関する検討を開始していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた検討項目を全て終了することができなかったため、次年度への繰り越しとし、予定する検討項目を全て終了するために使用する予定である。
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