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2022 年度 実施状況報告書

小胞体ストレス応答を司る長鎖ノンコーディングRNA 革新的治療への展開

研究課題

研究課題/領域番号 21K08733
研究機関札幌医科大学

研究代表者

市原 もも子  札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50835246)

研究分担者 奥崎 大介  大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (00346131)
山本 浩文  大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30322184)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードLncRNA01534 / 小胞体ストレス
研究実績の概要

小胞体ストレス応答は、ホメオスタシスの維持や癌細胞の生存に重要であるが、小胞体ストレス応答と長鎖ノンコーディングRNA (long non-coding RNA, 以下 lncRNA) の関係性はほとんど明らかではない。私達はプロテアソーム活性が低下して幹細胞様性質を示す大腸癌細胞ではlncRNA LINC01534が過剰発現していること、またLINC01534の高発現は大腸癌の予後不良と関連することを見出した。2021年度はLINC01534のノックダウン(KD)によって、大腸癌細胞株HCT116とRKOの増殖抑制と細胞周期のG2/M arrestが起きることを見出した。更に、LINC01534 KDにより小胞体ストレス応答に働くリン酸化eIF2α、ATF4といったPERK経路の構成分子の蛋白発現が亢進すること、更にGlutamine-free, Glucose-freeとした飢餓状態においてはLINC01534のノックダウンで一層小胞体ストレス応答作用が増強されることを見出した。2022年度にはLINC01534の局在をin situ hybridizationによって検討し、LINC01534は大腸癌の間質ではなく癌細胞で高発現していることが明らかにした。 LINC01534 KDによって、細胞浸潤能・運動能の低下とアポトーシス誘導を確認できた。小胞体ストレス誘導剤であるThapsigarginによって小胞体ストレス応答は活性化し、癌幹細胞性は低下した。LINC01534 KDにより、癌幹細胞性質が低下することをスフェアー形成能、5種のステムマーカー発現、上皮分化マーカー発現、抗癌剤 (5-FU) 感受性試験によって確認した。これらの所見から、LINC01534は癌幹細胞性とストレス応答を逆に制御するkey分子である可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでにLINC01534での癌の報告はない。LINC01534はこれまで不明であった癌幹細胞性と小胞体ストレス応答の相反する関係性を説明できる重要な分子である可能性があり、進捗は順調といえる。

今後の研究の推進方策

低プロテアソーム活性の細胞では不良蛋白(unfolded protein)が分解されずに蓄積され、細胞がこれをクリアしようとして小胞体ストレス応答を活性化するように想像される。一方、LINC01534は低プロテアソーム細胞で高発現しており、その細胞環境下で小胞体ストレス応答を抑制する方向に働くのかもしれないが、現状親株での実験しかしておらず不明である。LINC01534と癌幹細胞性との関わりは2022年度までに多くの証左が得られているが、プロテアソーム活性とLINC01534, 小胞体ストレス応答の三者の関係性については未知の部分が多く、最終年度はこの点について検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度は学会・論文などに使用する金額が少なかったが、令和5年度は学会・論文・データ保存のための電子機器のために使用する金額が増える予定である。

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公開日: 2023-12-25  

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