• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

放射線性皮膚炎に対するαリポ酸誘導体を用いた新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K08737
研究機関大分大学

研究代表者

河野 洋平  大分大学, 医学部, 准教授 (90572008)

研究分担者 猪股 雅史  大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
衛藤 剛  大分大学, 医学部, 准教授 (00404369)
相場 崇行  大分大学, 医学部, 医員 (10896012)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード放射線性皮膚炎 / αリポ酸 / 抗酸化
研究実績の概要

放射線治療の副作用としての皮膚炎に対する有効な治療法はいまだ確立されていない。酸化ストレスがメカニズムに強く関与する放射線性皮膚炎に対して皮膚への塗布製剤として適した強力な抗酸化物質αリポ酸誘導体は、臨床的効果が期待される。本研究ではαリポ酸誘導体DHL-HisZnの放射線性皮膚炎に対するメカニズムを解明し、臨床的有効性を評価する。
2021年度の研究としては、αリポ酸誘導体の経皮投与による皮膚変化を病理学的に詳細に検討することとした。放射線性皮膚炎における急性期では、酸化ストレスが関連する血管透過性亢進により浮腫性変化が生じることが報告されており、作成に放射線照射を要する放射線性皮膚炎モデルでの検討の前に、これまで研究実績があり簡便に皮膚の酸化ストレス状態を誘導できる抗癌剤投与動物モデルを用いて、皮膚変化を観察した。1%αリポ酸誘導体を抗癌剤投与前後に背部皮膚に塗布し、抗癌剤投与後24時間の時点で、2光子顕微鏡を用いて生体皮膚における蛍光ラベルしたデキストランの血管外漏出の程度を観察したところ、αリポ酸誘導体は有意に血管外漏出を抑制し、酸化ストレス環境における血管透過性亢進を制御しうることを確認した。また皮膚浮腫を反映しうる皮膚組織厚を測定し、αリポ酸誘導体投与は亜急性期において、抗癌剤投与による皮膚組織厚上昇を抑制する傾向も確認した。2022年度の研究では、皮膚組織において毛包再生を促すInsulin like growth factor(IGF)を検討し、αリポ酸誘導体が酸化ストレスによるIGF産生抑制を軽減し、ダメージからの皮膚再生を促すことを明らかにした。さらに免疫染色にて皮膚アポトーシス部位を検討し、αリポ酸誘導体は抗がん剤投与による血管内皮細胞のアポトーシス誘導を制御することを確認し、この機序により血管透過性亢進を抑制する可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画では放射線照射マウス皮膚炎モデルを作成し、皮膚の酸化ストレスによる変化に対してαリポ酸誘導体の効果を検討する予定であったが、セシウムを線源とした放射線30Gyを照射するモデルの作成の困難性があり、簡便に皮膚酸化ストレスを誘導する抗癌剤投与マウスモデルを用いて、αリポ酸誘導体の効果を検討した。放射線皮膚炎でも生じることが明らかとなっている酸化ストレスに起因する皮膚血管透過性亢進病態に対しαリポ酸誘導体経皮投与はこれを抑制する可能性を示し、さらにその作用機序は皮膚血管の内皮細胞アポトーシス誘導の制御であることを明らかにすることができた。放射線性皮膚炎に対する効果の証明にまで至っていないが、類似の皮膚病態である抗がん剤脱毛などの皮膚障害に対するαリポ酸誘導体の効果を明らかにし、ここまでの研究成果を論文化し、報告まで至っていることから、おおむね順調に進捗していると考えられる。

今後の研究の推進方策

放射線性皮膚炎動物モデルの作成が可能となれば、放射線障害としての皮膚酸化ストレスに対するαリポ酸誘導体DHL―HisZnの効果を検討する。10週例BALB/Cマウスの背部を剃毛し、コントロール群、放射線照射単独群、放射線照射+DHL-HisZn投与群の3群に分け、放射線照射単独群と放射線照射+DHL-HisZn投与群はセシウムを線源とした放射線30Gyを背部の1㎝径円形範囲に一回照射する。DHL-HisZn投与群はさらに放射線照射後1日目から照射後30日目まで計5日間、1日1回50μlのDHL-HisZn含有軟膏(0.1%、0.5%、1%、2%)を塗布する。放射線皮膚炎急性期の評価として、放射線照射30日後に犠死させ背部組織を採取し、炎症、アポトーシス、酸化ストレスマーカーの評価を行う。さらに晩期障害の評価として放射線照射後比較的期間をおいた(半年~1年)マウスモデルから背部皮膚組織を採取し、組織学的炎症の評価とともに、RNAを抽出し、炎症性遺伝子(ccl2, il1b, il6)の発現程度を比較検討する。またマイクロアレイハイブリダイゼーションオーブンを用いて遺伝子発現の変動についてGeneSpringソフトウェアを用いてDHL-HisZnのRNAにおける効果を網羅解析する。放射線照射による晩期障害に対するαリポ酸誘導体の効果を判定するとともに、そのメカニズムを解明する。放射線性皮膚炎モデル作成が難しい場合は、これまでの研究成果の特徴をさらに掘り下げることとし、抗がん剤誘発皮膚障害に対するαリポ酸誘導体の効果を臨床研究にて行う。特に皮膚血流が豊富で障害をきたしやすく、脱毛、炎症などの変化が観察しやすい頭皮において、αリポ酸誘導体の皮膚障害への効果を明らかにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Efficacy of cooling therapy and α-lipoic acid derivative against chemotherapy-induced alopecia in an animal model.2023

    • 著者名/発表者名
      Aiba T, Kono Y, Etoh T, Kawano Y, Oshima Y, Inomata M.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 114(3) ページ: 1007-1014

    • DOI

      10.1111/cas.15639

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 抗癌剤脱毛に対する皮膚冷却法およびαリポ酸誘導体塗布の治療効果の検討2023

    • 著者名/発表者名
      相場 崇行
    • 学会等名
      日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 抗癌剤脱毛に対するαリポ酸誘導体経皮投与と皮膚冷却法の効果の検討2022

    • 著者名/発表者名
      相場 崇行
    • 学会等名
      第44回日本癌局所療法研究会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi