研究の目的は、大腸癌のリンパ節転移の分子生物学的なメカニズムを解き明かすことである。大腸癌のリンパ節への転移能力は多様性があり、そのメカニズムは十分に解明されていない。大腸癌のリンパ節転移のメカニズムが解明され、術前に高精度なリンパ節転移の診断ができれば、真に追加切除が必要な症例を選択することができ、過剰な治療を防ぎ、患者の負担を軽減し、生活の質の向上や医療費の削減につながる可能性がある。つまり、大腸癌の治療戦略を大きく変更する可能性がある。 このメカニズムを解明するための手順を概説する。 まずは横浜市立大学から手術検体を受け取ります。この検体は、6種類の臓器から得られた臨床癌検体で、臨床情報と紐付いています。検体は癌部と、同じ患者由来の腫瘍と隣接した正常部位があれば採用しております。 まずは検体のRNAを抽出します。その後、CAGEとRNA-seqといった方法で遺伝子が転写されるスタート地点にあたる転写開始地点や、遺伝子の転写を制御するエンハンサーに関する情報を得ます。CAGEとRNA-seqから得られたデータを統合解析して、ゲノム領域でのリンパ節転移のメカニズムにせまります。癌部と正常部位の比較や、他の消化器癌との比較を横断的に行うことで大腸癌に特異的に発現する遺伝子やエンハンサーを同定する。 さらに、臨床情報と統合し、大腸癌の中てもリンハ節転移陽性の症例に特異的に発現するRNA分子を網羅的に検索し、大腸癌のリンハ節転移に関わる転写ネッ トワークを解明る。 多岐にわたる消化器領域の実臨床検体を使用したCAGEはこれまでに報告はなく、そこから検出された物質は非常に意義深いものとなる。それをRNA-seqにより遺伝子情報を得ることで、さらに重要性が深まる。
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