研究課題
切除不能胃癌に対するHER2阻害薬の治療効果は一定の成果が得られているが、組織を用いた評価方法には問題が残る。胃癌組織のHER2蛋白発現は不均一なため、検索した組織切片が腫瘍の特徴を十分捉えていない可能性が考えられる。そこで循環腫瘍細胞(CTC)を利用し、組織では捉えられない特徴を血液で俯瞰できないかと考えた。方法: 切除不能胃癌患者27人を対象とし、On-chip sort systemを用いてCTCを検出した。CTCのHER2蛍光強度の閾値を50とし、それ以上をCTC HER2陽性とした。さらにサイトケラチンとビメンチンの蛍光強度から上皮間葉系移行(EMT)を算出し、転移形成能を評価した。また、DNAを抽出し、次世代シークエンサーでがん関連遺伝子変異を抽出した。結果と結語: HER2組織陽性群は13人(A群、48%)で、化学療法とHER2阻害薬が投与された。HER2組織陰性患者は14人(52%)でそのうちCTC陽性群が8人(B群、30%)、でCTC陰性群が6人(C群、22%)であった。これらの患者には化学療法のみが投与された。各群の無増悪生存期間 (PFS) はA群が13.8 ヶ月、B群が7.0 ヶ月、C群が未到達であった(p=0.012)。CTCによる遺伝子解析では、胃癌やJAK-STATに関連する遺伝子変異においてGroup Cに比べてGroup A及びGroup Bに多く遺伝子変異を認めた。HER2陽性群は染色体不安定性を有し、様々な遺伝子変異を持つ可能性があり、こうした分子学的特徴がGroup Bの予後に関わっている可能性が考えられた。B群のHER2 CTC陽性群で治療成績が不良で、治療介入の必要性が示唆され、HER2阻害薬の適応拡大が期待される。CTC解析によるリアルタイムの血液モニタリングは有用と考えられた。
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Mol Clin Oncol.
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