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2023 年度 実施状況報告書

膵癌細胞の可変性制御による新規治療法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K08744
研究機関地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)

研究代表者

志智 優樹  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20887187)

研究分担者 佐々木 紀彦  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80639063)
石渡 俊行  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (90203041)
進士 誠一  日本医科大学, 医学部, 講師 (80409193)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード膵臓がん / がん幹細胞 / スフェア / SEM / E-cadherin / Vimentin / プロテオーム解析 / シングルセル解析
研究実績の概要

がんの不均一性(Heterogeneity)は異なる遺伝子変異を持つ腫瘍だけでなく、同じ遺伝子変異を有する腫瘍細胞にもみられる。これを腫瘍内不均一性(Intra-tumor heterogeneity)といい、がん幹細胞の存在がよく知られているが、周囲の環境に応じて形態や機能を変化させるがん細胞も存在する。本研究では、ヒト膵臓がん培養細胞株における形態的および機能的変化の可変性(Variability)に着目し、異なる特徴を示す膵臓がん細胞を同期させることで、抗がん剤治療効果の増強や転移抑制を目的とする。
私たちは従来の二次元培養と比較し、三次元培養で作製したスフェアにおいて、各細胞株の形態的・機能的特徴がより明瞭になることを明らかにした。E-cadherinが高くVimentinが低い上皮系の特徴を有する細胞株では、細胞間の接着が強い小型のスフェアを形成し、E-cadherinが低くVimentinが高い間葉系の特徴を示す細胞株では、ブドウの房状の大型のスフェアを形成する。これらスフェアの接着・遊走能も上皮系・間葉系細胞株で異なっている。上皮系細胞株にはプレートに接着しないもの、接着するが拡がらないもの、接着した直後からシート状に拡がっていくものがみられる。一方、間葉系細胞株は概して遊走能が高く、個々の細胞が放射状に拡がる。また上皮系・間葉系細胞株では、効果的な抗がん剤も異なる。三次元培養による立体構築は、生体内の腫瘍を再現するものであり、スフェアを用いたさらなる解析が新規治療法の開発につながると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

私たちは従来の二次元培養によるヒト膵がん培養細胞と比較して、三次元培養により作製した培地中の浮遊細胞塊のスフェアでは、形態的・機能的特徴がより明瞭になることを報告し、ヒト膵がん培養細胞の中には上皮系細胞株(E-cadherin高値/Vimentin低値)と間葉系細胞株(E-cadherin低値/Vimentin高値)が存在することを示した。これらの間葉系細胞株は粘液産生能を有してなかったが、上皮系細胞株では粘液産生を認め、さらに三次元培養を行うことで粘液産生能が増強されることを報告した。
プロテオーム解析では、ヒト膵がん培養細胞のムチン産生能を検討した。上皮系・間葉系細胞株の網羅解析により、8種類のムチンが同定された。これらムチンの発現強度を確認するために、免疫細胞化学染色による検討を行った結果、上皮系細胞株では三次元培養によりムチン産生能が増強されるのに対し、間葉系細胞株では大きな違いはみられなかった。
スフェアのタイムラプス解析では、上皮系細胞株が24時間程度で表面が平滑な球形のスフェアを形成するが、間葉系細胞株の大半は面積がそれほど変わらず、個々の細胞が密集した大型のスフェアを形成した。一方、スフェアの接着・遊走能に関して上皮系細胞株ではプレートに接着しないもの、接着するが拡がらないもの、接着した直後からシート状に拡がっていくものがみられた。また間葉系細胞株は共通して遊走能が高く、個々の細胞が放射状に拡がっていった。

今後の研究の推進方策

スフェアのタイムラプス解析の結果を踏まえ、上皮系・間葉系細胞株の転移能・遊走能をin vivoで評価する。また選択的スプライシングを調節することで上皮系アイソフォームの発現を誘導するESRP1遺伝子を間葉系膵がん培養細胞株に導入し、ESRP1発現株に対する抗がん剤への効果を検証する。

次年度使用額が生じた理由

想定より消耗品費が削減できた。学会へのオンライン参加により旅費が削減できた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Artificial intelligence-based analysis of time-lapse images of sphere formation and process of plate adhesion and spread of pancreatic cancer cells2023

    • 著者名/発表者名
      Shichi Yuuki、Gomi Fujiya、Hasegawa Yasuko、Nonaka Keisuke、Shinji Seiichi、Takahashi Kimimasa、Ishiwata Toshiyuki
    • 雑誌名

      Frontiers in Cell and Developmental Biology

      巻: 11 ページ: 1290753

    • DOI

      10.3389/fcell.2023.1290753

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Enhanced Morphofunctional Characteristics of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma Cell Lines in Three-Dimensional Cultures2023

    • 著者名/発表者名
      Yuuki Shichi, Fujiya Gomi, Yasuko Hasegawa, Seiichi Shinji, Kimimasa Takahashi, Toshiyuki Ishiwata
    • 学会等名
      The 2nd JCA-AACR Precision Cancer Medicine International Conference
  • [学会発表] 膵癌培養細胞株におけるスフェアの形成過程および接着遊走過程のタイムラプス解析2023

    • 著者名/発表者名
      志智 優樹, 五味 不二也, 長谷川 康子, 進士 誠一, 高橋 公正, 石渡 俊行
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会

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公開日: 2024-12-25  

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