研究課題/領域番号 |
21K08746
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
袴田 健一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (30271802)
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研究分担者 |
石戸 圭之輔 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (00436023)
三浦 卓也 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (30722136)
脇屋 太一 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (50571246)
木村 憲央 弘前大学, 医学研究科, 講師 (60436029)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リキッドバイオプシー / Kras変異遺伝子 / cfDNA / CA19-9 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
膵癌の治療成績の向上には、精度の高い、新たな微小膵癌検出法の開発が必要である。本研究では、新規ゲノム解析法を駆使して「新たな微小膵癌の検出法の開発」と「遊離膵癌細胞のゲノム発現調節機構の解明」に取り組むことを目的としている。本年度は、リキッドバイオプシーの対象として最も有望視されているKras遺伝子変異の検出に加え、がんの生物学的悪性度や遠隔転移ならびに抗腫瘍薬の奏功性との相関が指摘されているCA19-9値の変動に関係するタンパク分子、遺伝子の解析を行った。まず、「新たな微小膵癌の検出法の開発」におけるKras遺伝子変異の検出については、cfDNA濃度を調整してサンプル検体を作成し、digital PCR、real time PCRの至適条件設定を行い、複数の増幅検査法の検証を実施した。次いで、血漿中cfDNA濃度に個人差があることから様々なcfDNA濃度に調整してPCR測定の指摘条件を検証した。一方、「遊離膵癌細胞のゲノム発現調節機構の解明」については、まずはcfDNA中のKRAS 変異遺伝子以外のバイオマーカーを探索する目的で、CA19-9高値、低値、正常例別に実施したタンパクの網羅的解析を行い、新たなターゲットとしてCA19-9値と連動するタンパク分子が同定された。内訳は解答系酵素や抗血管新生機能に位置付けられるタンパク分子であり、CA19-9高値膵癌では代謝経路のリプログラミングが生じている可能性が示唆された。今後、これらの分子から新たなバイオマーカーを探索する予定である。また、遊離膵癌細胞の捕捉については各種方法で試み、膵癌細胞の検出方法について検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、「新たな微小膵癌の検出法の開発」については、膵癌の95%以上で変異を示すKras遺伝子を第一の標的とし、細胞株由来KRAS G12DでのリアルタイムPCR反応系ならびにデジタルPCR反応系の最適条件の確立、また、複数のKras変異遺伝子サンプルを濃度調整したcfDNAモデルで同様に検出可能かの検証を行なった。さらに、血漿内cfDNA抽出機器の選択、抽出法の最適条件について検討を行なった。一方、「遊離膵癌細胞のゲノム発現調節機構の解明」については、遊離癌細胞の捕捉の前の基礎実験として、膵癌をCA19-9高値、低値、正常例別に実施したプロテオミクス解析で、1060個のタンパクを同定し、うちNCBI GEO(Gene Expression Omnibus)から現在明らかになっているCA19-9に関係する分子は45個、さらにCA19-9高値で有意な発現変化を認めた10の分子を同定した。内訳を検討すると、CA19-9高値膵癌では低酸素に依存しない解糖系の亢進がみられた。今後これらをもとに新たなバイオマーカーを評価し、Kras変異遺伝子とともに遊離膵癌細胞の検出実験に繋げる予定である。遊離膵癌細胞の捕捉法については次年度に検証する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、細胞株由来KRAS G12DでのリアルタイムPCR反応系ならびにデジタルPCR反応系の最適条件の確立、また、複数のKras変異遺伝子サンプルを濃度調整したcfDNAモデルで同様に検出可能かの検証を行なった。さらに、血漿内cfDNA抽出機器の選択、抽出法の最適条件について検討までを行うことができた。また、CA19-9高値膵癌のプロテオミクス解析によって標的分子の同定を行なった。これらの研究に多くの時間を要したが、研究全体としては概ね順調に推移しており、遊離膵癌細胞の捕捉法について検証は次年度に実施する。cfDNAのKas変異遺伝子ならびにCA19-9関連遺伝子の同定に目処がたった段階で、進行膵癌患者の余剰血液を用いて遊離膵癌細胞検出感度の検討に移行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、cfDNAの標的遺伝子であるKras変異遺伝子の検出方法の確立に多くの時間を要したため、結果的に遊離膵癌細胞の捕捉研究のための研究費を年度内に使用するに至らなかったため、当初予定した流血中癌細胞捕捉のためのキット購入のための予算執行が行われなかった。次年度に予算執行し、研究の推進を図る予定である。
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