研究課題/領域番号 |
21K08747
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有明 恭平 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (10754921)
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研究分担者 |
佐藤 聡子 東北大学, 大学病院, 助教 (30815957)
大塚 英郎 東北大学, 大学病院, 講師 (50451563)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵癌 / 化学療法 / 転移 |
研究実績の概要 |
昨年度はGFPT2の発現量が多い細胞株を用いて,shRNAの手法を用いて安定発現抑制株を作成し,発現が少ない細胞株に対して発現ベクターを導入する過剰発現株の作成を行った.本年度はこれらの細胞株を用いて膵癌細胞におけるGFPT2の機能解析を行った.初めにGFPT2の発現とヘキソサミン経路の代謝産物であるN-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)の発現量についての解析を行った.安定発現抑制株ではコントロールと比較しO-GlcNAcの総量が低下する一方で,過剰発現株においては総量が顕著に増加していることが確認され,GFPT2の発現は膵癌におけるヘキソサミン経路の活性化にも重要な役割を果たしていることが明らかとなった.次に細胞機能に関する検討を行った.GFPT2の発現量は細胞の増殖能及び,ゲムシタビンへの感受性に影響は示さない一方で,移動浸潤能については,安定発現抑制株では,コントロールと比較し,移動能及び浸潤能が有意に抑制され,過剰発現株では,移動浸潤能の顕著な亢進が確認された.以上より膵癌細胞株においてGFPT2の発現はヘキソサミン経路を介して,細胞の移動浸潤能を制御している可能性が示唆された. 今後はヘキソサミン経路の活性化が細胞内においてどのようなシグナルを介して,細胞の移動・浸潤能に影響を及ぼすかについて解析するとともに,抗癌剤刺激を加えることで,GFPT2を介してヘキソサミン経路が活性化されるかについての評価を行うことで,抗癌剤投与時にヘキソサミン経路を阻害することが有用な治療法になるかについての検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度作成したGFPT2の発現調整細胞を用いて,膵癌細胞内におけるGFPT2のメカニズム及び細胞機能についての解析を行った.この結果,GFPT2は膵癌細胞においてもヘキソサミン経路を活性化させること,細胞機能における移動・浸潤能を活性化させることが明らかとなった.GFPT2は膵癌のキードラッグであるゲムシタビンによって発現が上昇することがすでに明らかになっていることから,抗癌剤刺激によるGFPT2の発現上昇がヘキソサミン経路を介して,癌細胞の移動・浸潤能を亢進している可能性を示唆することが明らかとなった.本年度の研究において細胞内の機能がおおむね明らかとなったことから,研究は順調に遂行しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後はヘキソサミン経路の活性化が,どのようなシグナルのもと細胞の移動・浸潤能を制御しているかについての検討を行うとともに,抗癌剤刺激そのものがGFPT2の発現を介してヘキソサミン経路を活性化させているかについての評価を行う.ゲムシタビン耐性株を用いて,ゲムシタビンによる的な刺激によって生存する細胞株におけるヘキソサミン合成経路の活性化についての評価を行うとともに,マウスの同所移植モデルを用いて,抗癌剤刺激後に残存する腫瘍におけるGFPT2の発現量及びヘキソサミン経路の活性化を測定することで,抗癌剤刺激がヘキソサミン経路を活性化させるかについての検討を行う.臨床検体を用いて,術前治療を行った膵癌症例においては,術前治療なく切除となった症例と比較し,切除検体においてGFPT2の発現が上昇しているかの評価を行うことで,実臨床において抗癌剤刺激がGFPT2の発現量を増加させているかについての検討も併せて行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
見込みよりも消耗品の購入が少量で済んだため残高が発生することとなった.残高については次年度の消耗品費に充てる予定である.
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