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2021 年度 実施状況報告書

CAFsとPD1/PD-L1系との関連に対する探索的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K08754
研究機関岡山大学

研究代表者

田邊 俊介  岡山大学, 大学病院, 助教 (20534770)

研究分担者 野間 和広  岡山大学, 大学病院, 講師 (10534761)
前田 直見  岡山大学, 大学病院, 助教 (10751117)
白川 靖博  岡山大学, 医学部, 客員研究員 (60379774)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード食道癌 / PD-L1 / CAFs
研究実績の概要

我々は、以前よりがん微小環境の中心的役割を担うCancer-associated fibroblasts (CAFs)の機能解析や治療法開発を行ってきた。CAFsは様々なサイトカインやケモカインを介して腫瘍の免疫抑制状態へ誘導することが知られている。そのなかでも、免疫チェックポイント分子として知られるProgrammed cell death 1 (PD-1)やProgrammed death ligand 1 (PD-L1)とCAFsとの関連について検討することを目的とした研究である。
岡山大学病院消化器外科にて根治切除された食道癌および食道接合部癌の切除標本を用いて、PD-L1の免疫染色を行った。腫瘍組織中の癌細胞とCAFsにおけるPD-L1発現を区別して評価することができた。食道癌において、癌細胞あるいはCAFsにおいてそれぞれPD-L1発現は予後不良因子であった。
また、ヒト由初代培養線維芽細胞、ヒト由来線維芽細胞株、マウス由来線維芽細胞株、ヒト由来癌細胞株、マウス癌細胞株を使用して、それぞれの相互作用をin vitroで評価した。それによって癌細胞と線維芽細胞は互いに干渉し、PD-L1発現を増強させていることが示された。マウス腫瘍モデルを用いて、In vivoでも癌細胞と繊維芽細胞が共存することでよりaggressiveな腫瘍となり、細胞傷害性T細胞が減少し、制御性T細胞が減少するいわゆるcold tumorとなっていた。それだけではなく、PD-L1発現が豊富な腫瘍を形成することが示された。
このように癌細胞とCAFsは互いに干渉し合いPD-L1発現を増強させることで腫瘍内を免疫抑制状態へ誘導していると考えられる。今後は癌細胞と線維芽細胞の相互関係を促進させる因子(サイトカインやケモカイン)についても追及する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

岡山大学消化器外科にて食道癌根治手術を行った140例を対象とし,切除標本の免疫染色を行った。癌細胞とCAFsにおけるPD-L1の発現を評価し、PD-L1陽性群と陰性群での臨床病理学的背景や予後を比較した。140例中61例(43.6%)が癌細胞のPD-L1陽性症例で、29例(20.7%)がCAFsのPD-L1陽性症例であり、いずれの陽性群も5年生存率は不良であった。また、癌細胞のPD-L1発現とCAFsのマーカーであるαSMA発現量は相関していた。多変量解析ではCAFsのマーカーであるαSMAとpT因子が癌細胞のPD-L1陽性のリスク因子であった。
また、 in vitroでヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE4, TE8))の培養上清を用いて刺激することで,ヒト初代培養線維芽細胞、ヒト線維芽細胞株(FEF3)のPD-L1発現が増強した。さらには,癌細胞と線維芽細胞芽細胞を共培養することで癌細胞と線維芽細胞の両方のPD-L1発現が増強した。マウス大腸癌細胞株(MC38)とマウス線維芽細胞株(MEF)を使用した実験でも同様の結果が得られた。In vivoでは、MC38とMEFを共接種した皮下腫瘍モデルにおいて、細胞傷害性T細胞が減少し、制御性T細胞が減少するいわゆるcold tumorとなっていた。さらに、フローサイトメトリーによる解析で腫瘍内のPD-L1発現は癌細胞でもCAFsでも増強していた。
研究開始初年度で上記の研究成果を得ることができたため、本研究課題の進捗としては概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

本研究のこれまでの結果から、腫瘍内において癌細胞とCAFsに発現したPD-L1はそれぞれ予後不良因子となること、また癌細胞とCAFsは相互に作用し合いPD-L1発現を増強させることが示された。今後は、この癌細胞とCAFsの相互関係を他の細胞株でも再現可能か評価すると共に、背景にはどのようなサイトカインやケモカインが関わってくるのかを評価する予定である。
また、今回使用したcold tumorな状態のマウス腫瘍モデルに対して抗PD-L1抗体もしくは抗PD-1抗体といった免疫チェックポイント阻害剤を投与し腫瘍効果や、腫瘍を採取し免疫染色やフローサイトメトリーで腫瘍内の環境変化を評価する予定である。Cold tumorでは腫瘍内の細胞傷害性T細胞が減少している状態であるため、免疫チェックポイント阻害剤の効果は乏しいことが予想される。しかしながら、CAFsのPD-L1を阻害した際に起きる具体的な現象はこれまで報告がなく、CAFsのPD-L1と癌細胞のPD-L1は必ずしも役割機能が同等とは限らない。そのため、CAFsのPD-L1の機能解析を行うため、ex vivoでCAFsと免疫細胞を反応させ、サイトカインの動向や免疫細胞の細胞傷害性の変化を評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究物品が予定より安く購入でき、研究も順調に進んだため。次年度に追加実験などの費用に当てることとした。

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公開日: 2022-12-28  

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