研究課題/領域番号 |
21K08761
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
内山 和久 大阪医科薬科大学, 医学部, 名誉教授 (80232867)
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研究分担者 |
小村 和正 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (10789853)
谷口 高平 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (70779686)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PTBP1 / ワールブルグ効果 / microRNA |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに申請者等が同定したmicroRNA(miRNA)によるPTBP1を介した癌特異的エネルギー代謝機構の制御システムが、どの程度普遍的な現象であるかを突き止めることを課題としている。本研究で機能を解析するPTBP1標的miRNAとして、これまで脳・筋に特異的に発現するmiRNAを同定してきたが、それに加えて、膵、精巣組織に偏在しPTBP1を標的とすることがデータベースから示唆されているmiRNAに照準を絞り、検討を進めている。前年度までに、実際のヒト正常臓器のRNAにおいて、今回検証の対象としたmiRNAの発現を解析し、PTBP1標的miRNAが脳、骨格筋に特異的に発現していたことと、同様のシステムが膵臓、精巣に内在することが示唆されている。さらに、膵癌の組織検体や公開されているデータセットを用いてPTBP1標的miRNAおよび、PTBP1とそのスプライシングの対象となるPKM2の発現を解析し、膵癌の発癌過程でもエネルギー代謝のリプログラミング(解糖系経路の活性化)が生じている可能性が示唆された。 そこで、2022年度は、主として膵癌における検討を進めた。臨床検体に関しては、前向きに検体の収集を蓄積しているが、実験の問題点として、多くの症例で術前化学療法が施行されている為、その影響を排除できないことが挙げられるため、打開策を検討中である。 細胞実験に関しては、前年度に選定した膵癌細胞株に対して、今回、機能を検証する膵特異的miRNA-Xを導入し、細胞増殖抑制効果を確認した。さらに、これまで他癌腫で確認されたPTBP1の発現低下や、一部のワールブルグ効果関連遺伝子の発現変化などを中心に検証を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌の臨床検体を用いた検証に関しては、術前治療により、腫瘍組織の線維化などを認める症例が多いため、組織採取に適した症例を収集することが若干難しい状況となっている。精巣腫瘍に関しては臨床検体の収集に努めているが、症例数が非常に限定されおり、収集に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体を用いた検証に関しては、術前加療がmiRNA-Xの発現に影響を与えるのかが、現時点では不明瞭なため、可能な限りの組織の収集を継続し、ある程度の症例数を獲得した上で、miRNA-Xの発現解析を実施する計画である。また、ホルマリン切片からマイクロダイセクションなどを用いてmiRNAを抽出し確実に癌部、非癌部の検体を用いることや、miRNAの免疫組織化学染色を計画している。臨床検体を用いた実験に限界がある場合は、細胞実験に首座を移行させ、分子学的機序を中心としたより詳細な病態解析を実施して、研究課題の核心にせまるよう、実験を計画する。精巣腫瘍に関しては、先ずは、可能な限りの検体収集を継続する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床検体の収集ペースが想定より遅延しているため、解析の実施が次年度となり、次年度使用額が生じた。また、次年度に多くの細胞実験を実施する計画となったため、これに費用をあてる計画である。
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