研究課題/領域番号 |
21K08765
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
伊藤 友一 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 研究員 (80397463)
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研究分担者 |
細田 和貴 愛知県がんセンター(研究所), がん情報・対策研究分野, 研究員 (00728412)
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃癌 / PDXモデル / PDC / プロテオミクス / 細胞表面タンパク質 / HLAクラスI結合ペプチド / 腫瘍浸潤リンパ球 / 個別化がんワクチン |
研究実績の概要 |
早期胃癌の多くは根治が期待できるのに対し、遠隔転移を伴う進行胃癌はもっとも予後が不良な固形癌のひとつである。近年のゲノム解析技術の目覚ましい進歩にもかかわらず、進行胃癌の有効な化学療法は限られており、革新的なアプローチによる新規治療法の開発が急務である。そこで、本研究では、プロテオミクスを用いた革新的なアプローチによって、胃癌の克服に取り組む。細胞表面タンパク質は、癌において機能的に重要な役割を果たしているだけでなく、その局在から、直接的な治療標的としても非常に有望である。細胞表面タンパク質は細胞内タンパク質に比べて極めて微量であることから、本研究では胃癌患者から外科手術によって採取された腫瘍検体を用いて患者腫瘍組織移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルを樹立し、PDX腫瘍を用いてHLAクラスI結合ペプチド(HLAリガンドーム)を含めた細胞表面タンパク質(サーフェスオーム)解析を行う。現在までに、胃癌14症例についてPDXモデルを作成し、このうち9症例においては、さらに患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立できた。またHLAリガンドーム解析から同定された免疫原性の高いHLAクラスI結合ペプチドについて検証を行うために、rIL-2を用いた腫瘍浸潤リンパ球の分離培養も行った。8症例において、PDXモデルと腫瘍浸潤リンパ球がペアとして得られている。現在各PDX腫瘍のエクソーム解析、RNAシーケンス解析、プロテオーム解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、胃癌14症例についてPDXモデルを作成し、このうち9症例においては、さらに患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立できた。PDXモデルの作成効率は30%程度でほぼ予定通りの進捗である。多層オミクス解析については、エクソーム解析、RNAシーケンス解析が8症例で完了し、プロテオーム解析を進めている。HLAリガンドーム解析については、既存のアミノ酸配列データベースに基づく解析に加えて、症例固有の予測アミノ酸配列データベースに基づくプロテオゲノミクス解析と、データベース非依存性のMS/MSスペクトルに基づいてペプチドのアミノ酸配列を決定するde novoシーケンシングを統合したパイプラインを開発し、現在解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
PDXモデルの作成を継続するとともに、多層オミクス解析を完了する。特に細胞表面タンパク質分子に着目して新規治療標的候補分子を選択し、機能解析を進める。また、HLAリガンドーム解析から同定された免疫原性の高いHLAクラスI結合ペプチドについて腫瘍浸潤リンパ球を用いた検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、プロテオーム解析計画にずれが生じたため、次年度使用額が生じた。解析計画を修正し、令和5年度に使用する予定である。
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