研究課題
頭頸部・食道には多中心性に扁平上皮癌が発生する。その発生には喫煙、飲酒等の環境因子が強く関与するとともに、胃癌等の重複癌の発生も臨床上、極めて重要である。我々は、本領域の多重癌・他臓器の重複癌の発生、喫煙・飲酒との関連に着目し分子生物学的機序を報告するととともに、治療成績向上に向け臨床研究を重ねてきた。近年、神経内分泌癌(NEC)、癌肉腫などの特殊型の発癌も注目されている。本研究は、特殊型も含む食道癌・頭頸部癌の発生・進展過程ならびに多重癌・重複癌の発生メカニズムを組織損傷・修復を含め、喫煙・飲酒との関連も含め解明する。さらに難治性の食道癌、頭頸部癌ならびに重複癌の予防および個別化治の確立につなげる。本年度は、1)扁平上皮癌と分化過程で共通の起源を有するとも考えられるNECにつき、食道のみならず胃・大腸NECの臨床病理学的検討を昨年度に引き続き進めた。さらに、食道癌肉腫と扁平上皮癌多発例を報告し、発癌機序を検討した。2)頭頸部癌および食道癌の同時性重複癌の臨床的特徴を検討する一方で、難治性とされる本重複癌に対する咽喉頭食道全摘に関する全国調査を行い報告した。3)食道癌術後の異時性重複胃癌(胃管癌)の臨床病理学的特徴に関して全国調査の結果の解析をすすめ、重複癌の観点からも解析し発表した。4) DNAの損傷修復タンパクRad51の食道癌の進展、治療抵抗性への関与を基礎的に研究してきた。今年度は多施設協同研究の結果、Rad51が術前化学放射線療法の治療効果のバイオマーカーとなることを明らかとなったので報告した。5)Hippo経路は細胞接触を感知しがん抑制的に働く経路で、その下流で作用する転写共役因子YAP1につき研究を行ってきた。今年度、さらに頭頸部癌発癌・進展におけるYAP1の意義につき研究をさらに進め発表した。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに、多角的に研究を遂行すると共に、その成果を下記のように学会・論文として発表している。1) 特殊型食道癌(NEC、癌肉腫)に関する研究:第122回日本外科学会総会、第73回日本気管食道科学会総会.2) 頭頸部・食道重複癌の特徴と治療:第30回日本消化関連学会週間:JDDW2022, Ann Gastroenterol Surg 20223)食道癌術後の異時性重複胃癌(胃管癌)に関する研究:第75回日本胸部外科学会定期学術集会4) 食道癌術前治療の効果予知バイオマーカーとしてのRad51の意義に関する研究: Ann Surg 20225) 扁平上皮癌発症におけるHippo経路の役割に関する研究:Cell Symposia Hallmarks of Cancer 2022 (San Diego)
食道・頭頸部領域の発癌について、癌多発、特殊型の発生、胃癌を含めた重複癌、さらには喫煙・アルコール摂取に着目し、組織損傷・修復の観点から分子生物学的検討をすすめる。一方、これらの臨床的特徴を明らかにし、個別化治療戦略につき考察していく。
前年度の使用残高に誤りがあった為。今年度使用分にて調整致しました。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
Annals of Gastroenterological Surgery
巻: 6 ページ: 54~62
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