研究課題
研究は潰瘍性大腸炎(UC)の癌化に関与する既知のgenetic異常ならびに網羅的に解析したepigenetic異常を解析し、大腸癌合併UC(UCAC)患者を早期診断可能とする体液を用いた低侵襲なバイオマーカー開発を目標としている。また、epigenetic異常であるDNAメチル化、 miRNAに着目することでそれにより制御される遺伝子発現に着目し、新たなUC癌化のメカニズムを解明することで、新たな治療戦略を確立し、UC患者の予後・QOLの向上を目指すことを目標とした。前年度までは、網羅的メチル化解析の結果からCRC,UCACともに高メチル化となるOPLAHを抽出し、UCにおけるOPLAHメチル化(mOPLAH)の臨床的意義を検証した。結果として、mOPLAHは盲腸粘膜と比較し、直腸粘膜で有意に高値を示し,直腸粘膜のmOPLAHは病悩期間と正の相関を示した。UCACのmOPLAHは非癌部UC粘膜に比べ有意に高値であり、UCAC合併患者の直腸粘膜におけるmOPLAHは癌非合併UC患者の直腸粘膜と比較し、有意に高値を示した。 ValidationにおいてもmOPLAHはUCAC合併患者を同定可能でることが検証され、直腸粘膜におけるmOPLAHの測定は、UCAC合併患者の拾い上げに有効であることが示した。最終年度は小児発症UC患者の非腫瘍性直腸粘膜におけるmiR-124プロモーターのメチル化レベルの意義を検証した。結果として、miR-124メチル化の増加速度は、成人発症のUC患者に比べて小児発症のUC患者で加速された。さらに、非腫瘍性直腸粘膜のmiR-124メチル化レベルは、UCAC患者ではUC単独の患者よりも有意に高かった(P = 0.02)。以上より非腫瘍性直腸粘膜におけるmiR-124メチル化は、UCACの発症リスクが最も高い小児発症UC患者を同定するための有用なバイオマーカーとなりうる。このように成人発症、小児発症のUC患者の直腸粘膜のDNAメチル化を評価することで発癌リスクの高いあるいはUCACが既に存在しているUC患者の拾い上げに貢献できる研究結果であった。
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