研究課題
CDK上流の文献的考察からG9a分子の関連が示唆されたため、大腸癌臨床検体を用いて、検討を行った。 G9aはインターロイキン 8 (IL)-8との関連性を示す分子であり、炎症反応と癌発生の調節において多面的な機能を果たすケモカインとされる。大腸癌切除症例 235例を免疫組織化学的に分析し、臨床的特徴との相関を検討した。G9a 発現が高い症例は全生存期間と無再発生存期間が良好であり、単変量解析および多変量解析により、低 G9a 発現は、疾患再発の増加および生存率の低下に対する有意な独立した予後因子であった (P < 0.05)。 G9a は、HCT116 および HT29 で高レベルで発現しており、 siRNA、shRNA、または G9a 特異的阻害剤 BIX01294 による G9a のノックダウンは、IL-8 発現を促進した。 G9aの発現を安定的に抑制したHCT116細胞ではスフェロイド数が有意に増加し、IL-8の発現を安定的に抑制したHCT116細胞ではスフェロイド数が有意に減少した。以上のことから、G9a による IL-8 の抑制は、G9a 発現が高い CRC 症例の予後を改善する可能性があり、 さらにG9a は癌の幹細胞性を抑制し、IL-8 を制御することによって化学感受性を高める可能性が示唆された。本知見を、Carcinogenesis誌に投稿しアクセプトされた。CDKの異常はアポトーシスと強く関連することから、p53に着目し、直接的にp53タンパク質を増減するスクリーニング系を立ち上げていくことを目標とする。スクリーニングはまず小規模のコアライブラリから開始する。
3: やや遅れている
CDK自体に対するchemical screeningの方法についてはいまだに確立されておらず、今後の課題となっている。
現時点ではCDKに対しての直接的なスクリーニング系は確立されていないものの、高度の関連性が示唆されるp53活性化分子においては、活性化を検知するスクリーニングが確立された。本スクリーニング系を用いて、コア・ライブラリ9600種のスクリーニングを実施した結果、57種のプライマリーヒットを得ることに成功しており、本系によってヒット化合物を絞り込み、最終的にWestern blotによるp53タンパク質の安定化を検証することで7種のヒット化合物を得ることに成功している。これらの化合物には、既にp53を活性化させることが報告されているスタウロスポリン (Villunger et al., Science 2003) やHarmine (Dai F, et al. PLOS ONE 2012) に加え、p53に直接結合するとされるCP-31398とその類縁体(Foster BA et al. Science 1999)が含まれていたことから、本スクリーニングの妥当性が実証されている。これらに加え新規ヒット化合物として、GMX-151,GMX-157を同定することに成功しており、新規ヒット化合物GMX-151について、p53野生型およびノックアウトの大腸癌細胞株を用いて検討したところ、p53タンパク質の安定化を確認するとともに、p53依存的に細胞増殖の抑制やアポトーシスの増加を認めている。本スクリーニング系を用いてCDK阻害剤の探索を行うべく、類縁化合物の入手を模索する。ただし、入手の目処が立たない場合には今年度と同様、文献的考察を行いながらCDKに関する新規メカニズムの探索を並行して行う。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Carcinogenesis
巻: 43 ページ: 797-807
10.1093/carcin/bgac050