研究課題
がん局所の免疫モニタリングとして、がん免疫微小環境の解析において抗腫瘍効果の主役を担う腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)を定量化する客観的な評価法「Immunoscore」 (切除標本の免疫組織染色により腫瘍中心・辺縁部で各CD3、CD8陽性Tリンパ球陽性細胞数を測定しスコアを算出)に着目し、このImmunoscoreが術前無治療食道癌300例の予後および術前化学療法の治療効果予測に極めて有用である可能性が示唆された(Noma T, Makino T, et al. Ann Surg 2021)。B細胞関連では、腫瘍周辺に存在し主にB細胞から構成される三次リンパ様構造(TLS)に着目し、その中でも成熟度の高度(secondary TLS)または中等度(primary TLS)のTLSが食道癌術前無治療例においては強い独立予後因子となることを見出した。さらに、これらの発現が食道癌に対する免疫チェックポイント分子阻害薬(ICI)の治療効果と有意に相関することも示し、がん局所の抗腫瘍免疫におけるB細胞の重要性が示唆された(in submission)。全身免疫モニタリングにおいては、食道癌ICI治療を受けた62症例の経時的な末梢血サンプルおいてがん抗原に対する自己抗体の網羅的測定を完了しており、現在は臨床データとの相互性を解析中である。また、同症例において末梢血T細胞のICI投与前後でNivolumab(IgG4)が結合したTおよびB細胞の各表面マーカー発現解析もフローサイトメトリーの条件セッティングを完了し現在解析を進行中である。
3: やや遅れている
とくに末梢血を用いた全身免疫モニタリングにおける計画課題の進捗についてやや遅延がある。これはフローサイトメトリー(FACS)での評価のための条件セッティングに予想外に時間を要しているためである。また腫瘍関連B細胞の解析に関して、がん局所におけるB細胞評価は上記のように三次リンパ様構造(TLS)の免疫染色を中心に順調に評価できているが、末梢血におけるB細胞、とくに制御性B細胞の評価に関して細胞populationが極めて少数であり、フローサイトメトリーでの検出が極めて難しいことが判明した。
これまで計画課題のうちとくに癌局所での免疫モニタリングを中心に進捗してきたが、今後は末梢血での全身免疫モニタリング解析を中心に進めていき、最終的に癌局所の免疫動態との関連性を評価する。なお制御性B細胞の評価についてはこれまでの実験経過から上記のように検出・評価が困難であることが判明したため、今後は他の課題へのエフォートシフトも考慮する。
コロナ禍が引き続いており、実験の進捗が遅れたため
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Annals of Surgery
巻: 277(3) ページ: e528-e537
10.1097/SLA.0000000000005104.