研究課題
研究計画のうち(A)がん局所の免疫モニタリングの内容としては、抗腫瘍効果の主役を担う腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)を定量化する客観的な評価法「Immunoscore」 (切除標本の免疫組織染色により腫瘍中心・辺縁部で各CD3、CD8陽性Tリンパ球陽性細胞数を測定しスコアを算出)に着目し、このImmunoscoreが術前無治療食道癌300例の予後および術前化学療法の治療効果予測に極めて有用である可能性が示唆された(Noma T, Makino T, et al. Ann Surg 2021)。さらに腫瘍辺縁に存在し主にB細胞を中心に構成される三次リンパ様構造(TLS)に着目し、その中でも成熟度の高度(secondary TLS)または中等度(primary TLS)のTLSが食道癌根治術を受けた316例の予後および免疫チェックポイント分子阻害薬(ICI)の治療効果予測における有用なバイオマーカーとなることを見出した(Hayashi Y, Makino T, et al. Br J Cancer 2023)。一方で研究計画(B)の全身免疫モニタリングについては、食道癌ICI治療を受けた62症例の経時的な末梢血サンプルおいてがん抗原に対する自己抗体の網羅的測定を完了しており、現在は臨床データとの相互性を解析中である。また、同症例において免疫チェックポイント阻害剤(Nivolumab)投与前後でNivolumab(IgG4)が結合した末梢血TおよびB細胞の各表面マーカー発現解析では、Nivolumab投与1週間後にとくにPD-1+CD8細胞におけるCD103, Ki-67,LAG-3といった各分子発現が有意に上昇することを確認した。現在は治療効果・予後を含めた臨床データとの関連性の解析をすすめている。
3: やや遅れている
とくに末梢血を用いた全身免疫モニタリングにおける計画課題の進捗についてやや遅延がある。これはフローサイトメトリー(FACS)での評価のための条件セッティングに予想外に時間を要したためである。
末梢血を用いた全身免疫モニタリングの研究計画にエフォートを費やす方針である。末梢血におけるB細胞、とくに制御性B細胞の評価に関しては細胞populationが極めて少数であり、フローサイトメトリーでの検出が極めて難しいことが判明した。今後は前述のように免疫チェックポイント阻害剤投与前後での経時的な食道癌患者の末梢血サンプルおいて、①がん抗原に対する自己抗体の網羅的測定結果、②Nivolumab(IgG4)が結合した末梢血T・B細胞の各表面マーカー発現解析結果、がそれぞれ臨床データとどう結びつくか解析をすすめていく方針である。
前述のように当初の研究計画より実際の実験の進行がやや遅れているため、次年度施行分の計画が存在するため
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Annals of Surgery
巻: 277(3) ページ: e528-e537
10.1097/SLA.0000000000005104.
Br J Cancer.
巻: - ページ: -
10.1038/s41416-023-02235-9.