膵癌は癌死の4位を占め、5年生存率が8%と予後不良な癌の一つである。唯一の根治的治療である外科的切除例でもその5年生存率は15%と生物学的悪性度が高く、他の消化器癌に比べいまだ効果的な治療法がない。また、膵癌はPD-L1の発現やneoantigenの発現も少なく、組織内へのリンパ球浸潤が非常に乏しい「cold tumor」であるため、他の癌腫で有効な免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいとされる。一方、造血器腫瘍において、マクロファージ免疫チェックポイント分子の制御により腫瘍細胞が減少し、強力かつ持続的な奏功が報告されている。しかし、膵癌における有効なマクロファージ免疫チェックポイント分子やその作用機序はほとんど解明されていない。そこで、マクロファージ免疫チェックポイントによる膵癌微小免疫環境の維持機構を解明しようと考えた。まず、膵癌患者の切除膵を用い、膵癌組織内に浸潤している免疫細胞のphenotypeをFCM解析と免疫組織染色にて評価したところ、マクロファージや樹状細胞、Tリンパ球の浸潤を認めた。次に、膵癌患者の切除膵を用いマクロファージ側の免疫チェックポイント分子の発現量を評価したところ、mRNAの発現量に差が見られる傾向にあった。腫瘍内細菌が腫瘍内マクロファージの機能に与える影響も検討したところ、腫瘍内細菌の多い症例では、TAM(腫瘍関連マクロファージ)が多く浸潤しており、マクロファージの貪食能が低下していた。
|