研究課題
本研究では、腫瘍細胞内に存在するmicrobiomeが腫瘍細胞のbiologyに影響を与えている可能性を考慮し、細胞内共生microbiomeに着目した癌の進展メカニズムの解明を目的とする。ステップ【1】で、ヒト膵癌組織を用いて細菌の構成成分であるLPSを抗LPS抗体による免疫組織化学染色検査で評価したところ、膵癌の約60例で腫瘍内細菌の存在を確認した。正常膵組織にはLPSは検出されなかった。蛍光標識した細菌が膵癌細胞株に取り込まれることをTime-Lapse imagingでリアルタイム撮影することに成功した。ステップ【2】で、細胞内に侵入することが報告されている特定の歯周病菌に着目し、ヒト膵癌組織のDNA抽出産物を用いて、PCRで増幅させたところ、歯周病菌であるFusobacterium nucleatum (F. nucleatum)由来のDNA検出群は非検出群と比較して、治療前の腫瘍サイズが大きく、膵後方浸潤の割合が高いことが判明した。ステップ【3】で、膵癌細胞株皮下移植マウスへ歯周病菌F. nucleatumを腫瘍内投与し、腫瘍径を評価したところ、他の歯周病菌投与群と比較して、F. nucleatum投与群では有意に腫瘍の増大が得られた。ステップ【4】で、歯周病菌F. nucleatumと癌細胞の共培養の上清のサイトカインアレイによりCXCL1の上昇がみられ免疫抑制性細胞の誘導を促すこと、それにより腫瘍浸潤性T細胞の減少がみられることが示された。これは、サイトカインの薬理学的、遺伝学的な阻害実験により確認された。以上の結果より、細胞内で共生するmicrobiomeが膵癌の進展へ影響を及ぼしていることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Cancer Science
巻: 114 ページ: 3666~3678
10.1111/cas.15901