研究課題/領域番号 |
21K08784
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
宮本 篤 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00756570)
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研究分担者 |
北畑 裕司 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00535338)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
勝田 将裕 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50464673)
水本 有紀 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (60596980)
宮澤 基樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90549734)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ワクチン / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
マウスXCL1のコード配列をウイルスベクターに導入し、増幅させた。MC38やB16といった腫瘍細胞株にリポフェクションによりマウスXCL1のコード配列を導入、XCL1産生腫瘍細胞を作成した。作成した腫瘍細胞株を培養し、通常の細胞株と比較して増殖能には変化がないことを確認した。また、作成したXCL1産生腫瘍細胞においてXCL1の産生が行われていることをReal Time PCR法を用いて確認、その産生量をELISA法を用いて測定した。以上の過程により作成した細胞株はヘテロな集団であり、XCL1の産生量も一定でないことが予測されたため、XCL1産生の多い、均一なクローンを単離するため、限界希釈法を用いた。複数の細胞クローン集団を単離し、それぞれの細胞クローンのXCL1産生を再度ELISA法を用いて確認した。最もXCL1産生の多い細胞クローンを選定し、培養・増殖させ、今後の実験で使用することとした。続いて、このようにして選定したXCL1産生腫瘍細胞クローンを非働化するのに適切な照射線量を検討した。照射線量を複数設定し、in vitroで増殖しないこと、照射後に7AADとAnnexinVの発現をFACSで調べ、最終的にアポトーシスへと誘導できる照射線量を調整した。非働化を担保したうえで、非働化XCL1導入腫瘍細胞のXCL1産生能をELISA法にて確認し、XCL1産生腫瘍細胞ワクチンの作成を完了した。このXCL1産生腫瘍細胞ワクチンとFLt3-L で誘導した骨髄由来XCR1+ DCをTranswell plateで共培養し、XCR1+ DCが走化性を示すことを確認し、ワクチンとしての有用性が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度の間に、XCL1産生腫瘍細胞ワクチンの作成を完了し、作成したワクチンをマウスに投与行い、抗腫瘍効果を検討するところまで行う予定としていた。機能的に均一化したワクチンを作成することには成功し、今後の実験に用いるために安定的に供給できる体制も整ったが、実際に、マウスに投与行う段階までには至らなかった。したがって進捗状況としては、計画よりもやや遅れているとせざるを得ない。その理由として一つは、新規抗がんワクチンの機能的均一性を担保することができなかったが、単一クローンによるワクチンを作成することにより解決することができた。また、その他の理由として、コロナ感染症拡大による想定外の業務が増加したことによる影響が挙げられる。現在も、コロナ感染症は沈静化しておらず、今後も影響を及ぼしてくると考えられるが、影響を最小限に抑え、令和4年度、令和5年度と少しずつ遅れを取り戻し、予定通り3年の研究期間での研究終了を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
XCL1産生腫瘍細胞ワクチンの作成、安定供給システムを確立することができたので、今後は、このワクチンを実際にマウスに投与することにより、その抗腫瘍効果について検討するとともに、機能解析を進める。具体的には、XCL1産生腫瘍細胞ワクチンをマウスの右大腿に、腫瘍細胞を左大腿に同時に接種、左大腿の腫瘍径を経時的に測定し、コントロール腫瘍細胞ワクチン投与群、PBS投与群と比較し抗腫瘍効果が増強していることを確認する。同様の実験をXCR1-KOマウスやβ2-ミクログロブリン-KOマウスを用いたモデルでも行い、XCR1+ DCやCTLの関与について検討する。また、投与部のリンパ節より回収したCTLが腫瘍細胞に対する障害活性を有することをクロムリリースアッセイにて確認する。また、蛍光マーカー、細胞透明化処理技術を使用し、生体におけるワクチンや免疫担当細胞の動きを可視化する。また、同様の実験をICIやpolyI:Cの併用モデルにおいても行い、検討・解析を行う。今後も、コロナ感染症による影響は遷延すると考えられるが、実験に対するエフォートを増やすなどして、影響を最小限に抑え、令和4年度、令和5年度とこれまでの遅れを挽回し、計画通り3年以内での研究終了、結果報告へとつなげていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品について節約することにより、予定より低予算で施行することが可能であった。R3年度にマウス実験まで進めることを予定していたが、実際には細胞ワクチンの作成までしか到達しておらず、繰り越した予算はマウス購入費などマウス実験に必要な諸経費として次年度に繰り越して使用する予定とする。情報収集のための学会旅費に関してもオンラインのものが多く、旅費を使用せずにweb上にて聴講が可能であったため、予定より低予算で可能であった。こちらに関しても今後は徐々に現地開催のものが増加してくると考えられ、次年度以降に繰り越して使用させていただきたいと考えている。
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