研究課題/領域番号 |
21K08785
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
吉村 清 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30346564)
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研究分担者 |
浅井 義之 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00415639)
角田 卓也 昭和大学, 医学部, 教授 (30275359)
平澤 優弥 昭和大学, 医学部, 助教 (30834121)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 加齢 / がん免疫 |
研究実績の概要 |
高齢者への薬物療法の適応は暦年齢、PS、臓器機能、合併症などから総合判断される。加齢の影響を科学的に評価し、治療のリスクとベネフィットを予測する客観的指標はないため、新たな指標の確立が必要と考えられる。 免疫系は個体の加齢に伴って変化し、「免疫老化」と総称される。主に胸腺の退縮によってT細胞が最も影響を受けると考えられており、加齢に伴う慢性炎症も影響し、Naive T細胞の減少、Memory T細胞の増加、老化T細胞の増加などが報告されている。高齢者でも末梢血中のT細胞数は保たれるため、免疫老化はT細胞の量ではなく機能(質)の変化がメインと考えられている。免疫老化によって多面的にネオアンチゲンに対する応答性が低下しうることから、免疫老化はICIの作用にも負の影響を与える可能性がある。 急速な高齢化、ICIの導入により、高齢がん患者に対してICIが積極的に行われるようになってきた。ICI単剤療法、ICIとchemo therapyの併用療法が増えていくなかで、加齢の影響に関する新たな客観的指標が必要と考えた。がんの病勢、慢性炎症や免疫老化などを含む宿主の状態によって免疫疲弊・免疫老化の程度には個体差が生じるため、加齢による影響は大きく年齢階級別に差が生じやすいと考えられる。免疫ステータスを年齢階級別に評価することで、がん薬物療法の年齢限界に対する新たなバイオマーカーの創出につながると考えた。 病理診断で固形癌と診断されている38歳から88歳までの42名のがん患者から薬物療法開始前・2ヶ月時点でPBMC、便検体、唾液を採取した。免疫系は相互関係がある因子であるため、単因子だけでなく多因子での解析が必要と考え、Delong法を用いて解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では大きく4つのことが判明した (1)T cellはがん患者でも加齢とともに減少傾向を認めるが、CD4/8+ Tcellの比率は不変であったT cellのサブセットは(既報と同様に)、CD8+ T cell においてNaive T cellは加齢とともに減少傾向を認め、CD4+ T cellにおいてCentral memory T cellは加齢とともに増加傾向を認めた (2)治療の影響は、CD8+ T cellはcytotoxic agent投与後に高齢者ほど減少するが、ICI投与後には減少を認めない。また、CD4+ T cellはICI/Cytotoxic Agentいずれの投与後にも高齢者ほど増加した。 (3)臨床効果との関連は、irAE発症例はCD4+ T cellとCD4+ Central Memory T cellがICI投与後に増加・維持した症例に多かった。また、CD4+ Central Memory T cellはICI投与前・後ともに比率が高い症例ではirAE発症が多かった。同時に、同症例はDCRも良好であった。高齢者ほどCD4+ CM T cellは増加しており、ICI/Cytotoxic agent投与後に増加傾向を認めることから、ICIの作用においても免疫老化が影響している可能性が示唆された。 (4)PD-1は、CD8+ T cellで加齢とともに増加傾向を認めた。irAE発症群およびNon-Responder群(DCR・PFS不良)では、ICI投与後にCD8+ PD-1+ T cellは減少傾向であった。 (4b)Tim-3は、CD4/8+ T cellいずれも加齢とともにMFIが増強した。特にCD4+ T cellが優位であった。また、PFSが良好な症例ではICI投与後に上昇傾向を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
現在本研究に関しては、免疫解析の部分を論文投稿中である。さらに腸内細菌と老化に関しての研究を遂行中であり、次年度にはまとめて論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大に伴う流通の滞りがあったこと、また、学会等がオンライン開催となり、予定していた出張が無くなったことにより、次年度使用額が生じた。 次年度は腸内細菌および老化に関しての研究に使用予定である。
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