研究課題/領域番号 |
21K08800
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
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研究分担者 |
甲斐 昌也 九州大学, 大学病院, 助教 (10755242)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍微小環境 / NK細胞 / scRNA-seq / 食道扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
腫瘍微小環境(TME)中の各種細胞はいずれも、腫瘍の免疫逃避に関与する形でそれぞれの不均一性(heterogeneity)を保持しており、これが腫瘍の浸潤・転移・治療抵抗性に関わると考えられている。その各種細胞のうちNK細胞は自然免疫系のリンパ球で、初期の生体防御機構において重要な役割を担っている。このNK細胞が正常に働き続けることができず、免疫監視状態を維持することが出来ないために、腫瘍細胞が免疫逃避状態に陥ってしまうのではないかとの仮説のもと、本研究は開始されるに至った。 本年度は、当院における食道扁平上皮癌(ESCC)症例に対する術前精査目的の胃カメラ生検検体、および手術検体からサンプルを採取し、当研究室で導入済みのDrop-seq技術を基盤としたChromium Single Cell Controller(10x Genomics社)を用いて、シングルセルRNAライブラリ作成を重ねた。各症例のデータをmergeして解析を行い、特徴的な遺伝子発現から各クラスターの細胞腫を同定した。その中でもNK細胞クラスターを抽出してその機能について遺伝子発現レベルで解析を行った。術前化学療法(NAC)の有無で比較したところ、NAC施行群のNK細胞はNAC非施行群と比較し、より高い殺細胞性を有することが示唆された。 今後は、NK細胞を機能別subtypeに再クラスタリングし、それぞれのsubtype機能を同定するとともに、NACの有無でsubtype別の機能にどのような違いがみられるか、その違いに寄与する因子が何なのかを同定する。更には、新たに同定した因子に関してin vitro, in vivoでの実証を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ESCCのサンプルは順調に採取でき、scRNA-seqライブラリ作成を重ねることができている。またNGS出力データの解析環境を整え、データ処理の手法についても習熟してきており、随時解析を重ねながら、ESCCのTME中のNK細胞の機能についてNACの有無での比較を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
NK細胞を機能別subtypeに再クラスタリングし、それぞれのsubtypeの機能を同定する。加えて、NACの有無でsubtype別の機能にどのような違いがみられるかを遺伝子レベルで検討し、さらにはその違いに寄与する因子が何なのか、他の細胞腫の解析も加え明らかにする。 新たに同定した因子に関してin vitro, in vivoでの実証を行い、最終的にはTME内NK細胞の特定のsubsetの再活性化を誘導することによる、新たな個別治療アプローチの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は抗体、試薬、シングルセル受託解析の費用に使用予定である。
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