研究課題
腫瘍微小環境(TME)の研究では、NK細胞を含む各種細胞が腫瘍の免疫逃避に関与する形でそれぞれの不均一性(heterogeneity)を保持しており、これが腫瘍の浸潤、転移、治療抵抗性に深く関わっているとされている。自然免疫系の重要な構成要素であるNK細胞の機能不全が、腫瘍細胞の免疫逃避を助長する可能性があるとの仮説のもと、本研究を開始した。具体的には、食道扁平上皮癌(ESCC)症例の内視鏡生検および外科手術から得られたサンプルを使用し、Chromium Single Cell Controller (10xGenomics社)を用いたシングルセルRNA解析を行い、腫瘍内浸潤NK細胞の遺伝子発現を詳細に調べた。この解析から、細胞疲弊マーカーであるPD-1、TIM-3、TIGITの発現には正常部と腫瘍部で大きな差は見られなかったが、細胞障害機能を示すGranzymeBやPerforin1の発現は腫瘍部で顕著に低下していることが明らかになり、NK細胞の細胞障害機能の低下が発癌過程において重要な役割を担っている可能性が示唆された。さらにNK細胞を詳細に分類し、4つのサブクラスターを同定し(NK1:NCAM1 High, NK2:Activated NCAM1 Low, NK3:NCAM1 Low, NK4:IL7R+CD52+)、術前化学療法を行った症例と行っていない症例の2群でその遺伝子発現を比較解析した。そのうち活性化マーカーの高いサブクラスターであるNK2の機能が術前化学療法群で亢進しており、術前化学療法によりNK細胞の抗腫瘍免疫機能が活性化している可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
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