研究課題
ミスマッチ修復欠損・マイクロサテライト不安定性(dMMR/MSI-H)を示す大腸癌は、全大腸癌のうち15%程度であり、転移再発例においては4-5%と低頻度であるが、免疫活性化と免疫逃避、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の適応など、日常臨床において最も確立したサブタイプといえる。しかしdMMR/MSI-Hは、部分的な重複と相反する特徴が混在し極めて広汎なスペクトラムを内包しており、この不均一性は既知のゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、免疫学的因子などによって容易に説明することはできない。本研究の目的は、dMMR/MSI-H大腸癌を、個別化治療が可能な複数の希少サブフラクションの集合として再認識することである。dMMR/MSI-H大腸癌の不均一性は、単一の因子により説明することはできない。網羅的・多層的視点が必須であり、本研究では、大規模かつ複数のdMMR/MSI-H大腸癌マルチオミクスコホートを用いて、網羅的プラットフォーム(マイクロアレイ、RNA-seq、コピー数解析、ゲノムseq)、非網羅的プラットフォーム(免疫組織学的検討、in vitro実験系、免疫学的実験系)を統合し、遺伝子だけでなく免疫・間質のプロファイルを活用しながら検討を進めている。
3: やや遅れている
複数の仮説に基づく検討が必要でありデータ解析が複雑であること、dMMR/MSI-H大腸癌の絶対数が少ないこと、などが研究のlimitationとなっており予備的段階にある。
大腸癌症例の追加によりdMMR/MSI-H症例数を底上げし臨床的な検討を進めていく。データ解析の継続とともにin vitroの解析に着手する。
当研究室で蓄積していたデータ解析が主体であったこと、当研究室ですでに確立した実験系が本研究の予備実験に流用可能であったことから、結果として新規の支出が抑えられた。次年度使用額は、消耗品費に充当する。
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