研究課題/領域番号 |
21K08806
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
宇和川 匡 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (70287209)
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研究分担者 |
恩田 真二 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10459620)
白井 祥睦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10785364)
阿部 恭平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30751292)
後町 武志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40338893)
春木 孝一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60720894)
池上 徹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80432938)
古川 賢英 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80624973)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 酸性β-グルコシダーゼ |
研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質の代謝は、細胞膜の形成において重要な役割を果たしており、癌細胞の悪性度および化学感受性に関連し、スフィンゴ脂質の分解は、複数のリソソーム グルコシダーゼに依存している。我々はミトコンドリアの機能不全に関連するリソソーム酵素、酸性β-グルコシダーゼ(GBA)の膵癌における機能を解析した。ヒト 膵臓癌細胞株 (PANC-1、BxPC-3、および AsPC-1) を用いて、 siRNAで GBA ノックダウンの条件下での、膵臓癌細胞の形態変化、GBA酵素活性、GBAタンパク質発現、細胞生存率、活性酸素種(ROS)生成、ミトコンドリア膜電位(MMP)、およびマイトファジーフラックスを評価した。 GBA タンパク質レベルと酵素活性は、細胞株間で異なっていたが、GBA ノックダウンは細胞増殖を抑制し、特に GBA 酵素活性が低い PANC-1 および BxPC-3 細胞でアポトーシスを誘導した。 また、MMP を減少させ、ミトコンドリアのクリアランスは抑制された。このミトコンドリアクリアランス障害は、機能不全のミトコンドリアの蓄積と膵臓癌細胞での ROS 生成をさらに誘発し、結果的にアポトーシスを誘発した。膵臓癌に対する標準的治療薬であるゲムシタビンにGBA 抑制が加わると抗腫瘍効果は増強した。新たな膵臓癌治療として細胞障害性薬剤とGBA抑制の併用は期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は膵がん細胞の栄養獲得メカニズムを明らかにすることで、具体的には膵がん細胞内のライソゾーム酵素による糖代謝ネットワークを解析し、膵癌特異的なエネルギー産生経路を明らかにすることであるが、昨年度の研究では酸性セラミダーゼ阻害による膵がん細胞への影響をsiRNAとshRNAを用いた遺伝子治療を用いて検討し、アデノウイルスベクター(AAV8)を使用したsiRNAおよびshRNAによる酸性セラミダーゼ阻害は、膵がん細胞および異種移植マウスモデルでアポトーシスを誘導し抗増殖効果を示し、加えて酸性セラミダーゼ阻害は、ミトコンドリア機能障害、活性酸素種の蓄積、およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ抑制を誘発し、セラミド蓄積を伴う膵臓癌細胞のアポトーシスを誘導した。膵がん細胞における酸性セラミダーゼ阻害による抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにし、論文化した。 さらに本年度は上記の研究結果をまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoで膵がん細胞の栄養獲得メカニズムを明らかにし、膵がん細胞内のライソゾーム酵素による糖代謝ネットワークを解析し、膵癌特異的なエネルギー産生経路を明らかにしていく中で、昨年度、今年度までのin vitroでの研究結果をもとにin vivo研究に展開したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究を、一部次年度に行うこととしたため。
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