ヒトinduced pluripotent stem cell (iPSC)は、肝細胞様細胞への分化誘導が可能である一方、分化誘導の過程でその増殖能は経時的に低下していき、iPSC由来肝細胞様細胞の長期間に渡る維持培養は困難とされ、肝細胞移植をはじめとした臨床応用に向けての一つの大きな障壁となっている。我々は、ヒトiPSCから分化誘導した肝細胞様細胞の培養条件にサイトカインおよび低分子化合物を組み合わせることで、長期継代可能な肝幹細胞様細胞(HSLC)を誘導樹立した。また、iPSCから肝細胞様細胞への分化段階の評価をreal timeで行うために、CRISPR-cas9システムを用いてレポーター遺伝子のノックインを行い、アルブミンプロモーター下にGFPを発現するiPSC株(ALB-iPS)を作成した。作成したALB-iPSは、既報の肝細胞誘導プロトコールのもとで、GFPを発現するアルブミン発現肝細胞様細胞への分化が可能で、さらにサイトカインおよび低分子化合物を組み合わせることで、HSLCの誘導が可能であった。これらの細胞は長期継代後であってもサイトカインおよび低分子化合物を調整することで、ornithine carbamoyltransferaseやcarbamoyl-phosphate synthetase 1といった尿素サイクル酵素を発現する成熟肝細胞様細胞へのさらなる分化誘導が可能で、Rifampicineの投与によりCYP3A4の誘導も可能であった。この細胞を免疫不全マウスに移植(脾臓内)すると、肝臓内でGFPを発現する細胞集団のrepopulationが確認された。以上より、iPSC由来HSLCは、小児代謝異常性肝疾患をはじめとした肝細胞移植で治療可能と考えられている肝疾患への応用が可能な治療ソースとなりうる可能性が示された。
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