研究課題/領域番号 |
21K08811
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡村 行泰 日本大学, 医学部, 教授 (10704489)
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研究分担者 |
大島 啓一 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (10399587)
上坂 克彦 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (20283434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 同一がん遺伝子内複数変異 / 肝細胞癌 / MUC16 / CTNNB1 |
研究実績の概要 |
肝細胞がんは、殺細胞性抗癌剤が効きにくいがん腫であるが、近年、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されており、多くの臨床試験が行われている。2020年、同一がん遺伝子内の複数変異が発がんに関与する新たな遺伝学的メカニズムであることが示され、複数変異が分子標的薬の治療反応性を予測するバイオマーカーになりうることが報告された。 本研究では、当院で2014年1月より行っているマルチオミクス解析結果をもとに、同一がん遺伝子内の複数変異に着目し、これらの遺伝子変異と予後、病理学的特徴との関連、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーとしての有用性を追求する。 肝細胞がん切除223例に対し、全エクソン解析を行った結果、223例中178例(80%)において何らかの遺伝子に複数変異を認め、既報のようにがん抑制遺伝子よりがん遺伝子に複数変異を有意に認め、複数変異例で有意に無再発生存率が不良であることがわかった。肝細胞癌において同一がん遺伝子内の複数変異は、MUC16, CTNNB1内に高頻度で認められた。MUC16 mRNA発現量は、同一がん遺伝子内の複数変異例において、単数変異例より有意に上昇していた(P<0.001)。 MUC16内の複数変異は、肝炎ウイルス罹患、腫瘍マーカー高値、脈管侵襲と相関しており、MUC16内複数変異例は、単数変異例より有意に無再発生存率が不良であった(P=0.012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に則り、肝細胞がんにおいて同一遺伝子内の複数変異の頻度の高い遺伝子を明らかにすることができ、MUC16遺伝子を中心に予後、病理学的特徴に関する検討を終了できたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、肝細胞がん切除例に対し、マルチオミクス解析を行う。 肝細胞がんの発生に重要なドライバー遺伝子のうち複数変異の頻度が高いがん遺伝子(PIK3CA、CTNNB1、ARID2)に対し、マルチオミクス解析を終了した症例において、日常臨床で実施可能な免疫染色を行い、蛋白発現量との相関を検討する。 CTNNB1をはじめとした他の遺伝子についても予後、病理学的特徴との関連を検討していく予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、コロナ禍のため、学会出張の予算として計上した旅費の使用がなかった。令和4年度もコロナの影響を受けると考えるが、旅費計上する。旅費として使用出来なかった場合、免疫染色試薬などの消耗品に使用する予定である。 令和3年度は、研究分担者が予定していた物品の購入を見合わせたため、余剰金が発生した。令和4年度に使用する予定である。
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