研究実績の概要 |
本研究では、静岡がんセンターで2014年1月より行っているマルチオミクス解析結果をもとに、同一がん遺伝子内の複数変異に着目し、これらの遺伝子変異と予後、病理学的特徴との関連、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーとしての有用性を追求した。肝細胞がん223切除例中178例(80%)において何らかの遺伝子に複数変異を認め、既報のようにがん抑制遺伝子よりがん遺伝子に複数変異を有意に認めた。 複数変異例で、単変異例に比較して有意にTMBが高く、3つ(1, 15, 16)のsignature contributionでスコアの差を認めた。複数変異例で、無再発生存率が不良(P=0.012)であることがわかった。多変量解析においても複数変異は独立した予後因子(HR 1.72, P=0.045)であることがわかった。 肝細胞癌において同一がん遺伝子内の複数変異は、MUC16, CTNNB1内に高頻度で認められた。 MUC16内の複数変異は、肝炎ウイルスの罹患、腫瘍マーカー高値、脈管侵襲と相関しており、その結果、単数変異例より有意に無再発生存率が不良であった(P=0.012)。 MUC16内の複数変異が、WTと比較して有意にTMBが高く(P=0.036)、mRNA発現量が高い傾向にあった(P=0.058)のに対し、CTNNB1内の複数変異は、signature 16のcontributionが有意に高値(P=0.045)であった。 肝細胞がんにおいて、同一がん遺伝子内に複数変異を有する症例は、腫瘍学的悪性度が高いことが示唆されたが、TMB高値の症例も多く、免疫チェックポイント阻害薬により、予後改善につながる可能性が示唆された。
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