研究課題/領域番号 |
21K08812
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
菊池 悠太 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80882711)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小口径人工血管 / ポリカプロラクタングラフト / 糖尿病 / インスリン治療 / 自家血管様変化 |
研究実績の概要 |
1mmの小口径PCLグラフトをエレクトロスピニングにより作成し、抗血栓性及びハンドリング向上のためにポリビニルアルコールでグラフトをコーティングした物を実験に使用した。 先行研究の再現性を確認するため、上記グラフトを健常ラットの腹部大動脈に移植し、その開存性や自家血管様変化を観察した。開存性は2週間及び6週間で差はなく、6週間の方でグラフト内腔の内皮細胞及び平滑筋細胞の生着が多く、我々のPCLグラフトが先行研究と同様に時間と共に「自家血管様変化」を起こしていることを確認した。 次にストレプトゾトシンの尾静注により糖尿病ラットを作成し、グラフト植え込み後2週間の健常ラット及び糖尿病ラットでグラフト機能を評価した。糖尿病ラットで全例閉塞しており、自家血管様変化の観察には至らなかった。また、一部グラフトで瘤化しており、周囲に白血球の集積や細菌塊が確認され感染が観察された。 最後に糖尿病ラットに毎日中間型インスリンの皮下注を行い、糖尿病治療モデルを作成した。これを用いてグラフト植え込み後2週間の糖尿病ラットおよ糖尿病治療ラットでグラフト機能を評価した。糖尿病ラットではほぼ全例グラフト閉塞したが、糖尿病治療ラットでは健常ラットと同等の開存が得られた。また、自家血管様変化についても健常ラットとほぼ同等で糖尿病治療がグラフトの機能を維持することが明らかとなった。 この結果により、臨床に近い併存疾患とその治療モデルで開発人工血管の試験を行うことでより臨床応用に近づいた検討が行えることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマは元々糖尿病における血管障害の主体と考えられるアルギナーゼを阻害することによる植え込み人工血管の機能を確認することにあったが、糖尿病の血管障害や凝固亢進がアルギナーゼ阻害のみで正常化することは難しいと考え、本研究テーマにおいては糖尿病自体を治療するという方法に至った。 基本的な実験目的や方法に変更は行っておらず、また、本研究は仮説と同じ結果が得られ、すでに論文として出版されている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに研究テーマとしては結果が得られており、論文として報告している。今後は本研究テーマをもとに我々の研究チームで開発を進めている人工血管を併存疾患とその治療モデルで検討を重ね、心臓血管病患者により最適な小口径人工血管の開発に邁進していく。
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