研究課題/領域番号 |
21K08813
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
于 在強 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40624268)
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研究分担者 |
瀬谷 和彦 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40281919)
大徳 和之 弘前大学, 医学研究科, 教授 (50374822)
今泉 忠淳 弘前大学, 医学研究科, 教授 (90232602)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大動脈弁石灰化 / 大動脈弁狭窄症 / 動脈硬化 / 血管内皮増殖因子受容体2 |
研究実績の概要 |
大動脈弁狭窄症(AVS)患者から得たヒト大動脈弁間質細胞(HAVICs)が、炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子α(TNF-α)や高リン酸など様々な異所性石灰化刺激に対して高感受性であることを示した。第一継代(P1)細胞について免疫細胞化学的特徴や各種分化能を調べた。その結果、P1 HAVICsのほとんどがCD73、CD90、およびCD105陽性であり、CD45およびCD34陰性であることがわかった。さらにHAVICsは血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)陽性でもあり、そのうち約半分がはα-平滑筋アクチン(SMA)陽性であることがわかった。これらの細胞は、コロニー形成能を持ち、骨芽細胞様細胞への分化能を示した。石灰化した弁組織の免疫染色でも、VEGFR2陽性細胞が弁全体に広い範囲で局在する一方、α-SMA陽性細胞は一部の組織でしか認めなかった。また、VEGFR2陽性HAVICsがTNF-α存在下で転写因子、NFkB活性化を促進し、骨形成タンパクBMP2-アルカリホスファターゼALP経路を介して異所性石灰化を誘発することを確認した。 AVSの患者から単離されたHAVICsは、間葉系幹細胞としての性状(CD73、CD90、CD105陽性、およびCD45、CD34陰性)を示したが、骨芽細胞以外に脂肪細胞や軟骨細胞への分化能を示さなかった。これらの細胞は、全てVEGFR2陽性であり、様々な石灰化刺激に感受性が高い。VEGFR2陽性細胞は、AVS患者から得た石灰化大動脈弁において、内皮だけでなく間質にも多数局在していた。このことは、AVS患者から単離されたHAVICsが大動脈弁内皮細胞に由来し、内皮間葉移行によるこれらの細胞の分化が大動脈弁の異所性石灰化に寄与する可能性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動脈弁狭窄症症例の石灰化した大動脈弁より順調に大動脈弁間質細胞(HAVICs)を単離していた。VEGFR2陽性細胞がTNF-αや高リン酸に対して高い感受性を認め、遺伝子レベルの変化を調べていた。実験に必要な試薬は滞ることがなく準備できていた。実験動物は順調に育てていた。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)が関与する弁石灰化のタンパクレベルの変化を調べる予定である。また、VEGFR2が関与する弁石灰化を抑制できる試薬や化合物の探索を行う。高リン餌で大動脈弁狭窄症の動物ラットモデルを作製し、上記の試薬や化合物を投与し、弁石灰化の進行を抑制できるかどうかについて検討する。同時にその副作用があるかどうかについて詳しく検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物を購入した後、大動脈弁狭窄症を誘発する特製餌を発注してから届くまで時間を要したため、納品が遅れ、年度内に支払うことができなかったために残額が生じた。研究の進行状況には影響がなかった。 残額は実験動物用の特製餌と採血キット及び保存用具、小動物用超音波装置の消耗品に使用する予定である。
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