研究課題/領域番号 |
21K08817
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤原 立樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科 心臓血管外科, 医学部内講師 (00632291)
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研究分担者 |
大内 克洋 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 特任准教授 (20322084)
土方 亘 東京工業大学, 工学院, 准教授 (30618947)
井上 雄介 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80611079)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ECMO / 新型コロナウイルス感染症 / COVID-19 / 血栓予防 / リアルタイム血栓モニタリング / インドシアニングリーン蛍光造影 / 拍動流 / 円軌道加振 |
研究実績の概要 |
【背景】COVID-19パンデミック初期のSARS-CoV-2は肺炎発症のみならず、ECMOを必要とする急性呼吸性窮迫症候群に至るウイルスであった。また感染すると強い血液凝固傾向を示すため、ECMO治療において回路内の血栓をコントロールすることに難渋した。著者はECMO回路内の血栓予防・血栓検出技術を速やかに実現することが喫緊の課題であると考え、医工連携共同研究チームを組み、研究開発に従事した。 【血栓予防法】ECMOデバイスの抗血栓性に関しては材質や構造設計など様々な工夫がなされてきたが、血栓形成を完全に予防できていないことが実状である。そこで従来とは異なる流体力学的なアプローチによる血栓予防法を考案した。ポンプに対してはインペラを周波数300Hz程度で極微小に加振することで表面への凝固因子の付着を阻害し、人工肺に対してはインペラ回転数を調整して拍動流を作り、人工肺内部の血液滞留を予防する方法である。いずれも従来の血栓対策と競合するものではなく更に血栓予防効果を高めることを目的としている。市販遠心ポンプや東京工業大学が開発した磁気浮上型遠心ポンプにこれら機能を搭載し、大型動物実験にて検証した。 【血栓検出法】ポンプのインペラを数十ミクロン,数十Hzで振動させ,この時の変位と電流の応答からポンプ内血栓を検出する方法を開発した。また人工肺の血栓検出法として、インドシアニングリーン(ICG)蛍光造影を用いて血栓を詳細に観察することに成功した。本手法では「血液は白、血栓は黒」と白黒二色で表現され客観性の高い評価が可能であった。ICGによるECMO回路の血栓検出法は、当院の倫理委員会に臨床研究として申請し、6例に実施した。 開発した技術で3件の国内特許出願、2件の国際特許出願を行った。現在は共同研究契約を締結した医療機器企業と開発した技術の臨床導入に向けた準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から大きく実験プロトコルの変更はないが、現在解析に必要な実験数を重ねている。今年度は自作ポンプのみならず、医療機器開発企業と連携して市販遠心ポンプを用いた検証を行った。ICGによるECMO回路の血栓検出法は、当院で臨床研究として申請し、6例に実施した。本研究結果をもとに人工肺の血栓検出・予防に関する3件の国内特許出願、2件の国際特許出願を行った。
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今後の研究の推進方策 |
【ポンプ内血栓の血栓検出・血栓予防】加振の周波数,振幅,加振円軌道方向について更に検討を重ね、最適な血栓予防効果となる条件を探求する。 【人工肺の血栓検出】白黒二値化された画像は、コンピュータによる血栓の自動検出や遠隔モニタリングへの応用に適していると考え、現在システムを開発している。当院で実施したICGによるECMO回路の血栓検出法については、現在、多施設臨床研究の準備を進めている。 【人工肺の血栓予防】正弦波では血栓予防効果はなく、半波整流波の拍動流では定常流と比較し人工肺内の血栓抑制効果が期待できることが分かった。今後はパラメーターを変更しつつ更に検討を重ね、最適な血栓予防効果となる条件を探求する。 ECMOの抗血栓性向上に関する技術はCOVID-19のみならず、様々な病態に対して有用である。現在、共同研究契約を締結した医療機器企業と開発した技術の臨床導入に向けた準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックにより実験を行うことが出来ない期間があった。また同様の理由で、いくつかの学会が現地開催ではなくオンライン開催となったため、旅費がかからなかった。
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