研究課題/領域番号 |
21K08820
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (70718311)
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研究分担者 |
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
宇都 甲一郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (30597034)
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378221)
蟹江 慧 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (80636407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 癒着 / 心膜 / 生体吸収性ポリマー / ペプチド |
研究実績の概要 |
心臓血管外科手術では、手技の複雑化やステージ手術等の増加に伴い、再手術症例が増加している。再手術時には心臓は周辺組織と癒着しており、癒着剥離操作は、手術手技の難易度を上げるだけでなく、剥離時の臓器損傷が致命的出血性合併症を招くことがある。また癒着は術後拡張障害を惹起し、HFpEFといった心不全の原因となる。現在臨床で使用されている人工心膜(ePTFE)は、開胸時に臓器損傷を回避する物理的遮蔽の役割は果たすが、癒着防止能力に乏しい。また、非吸収性材料のため体内に遺残して繊維化したり、感染の温床となりうる。正常心膜では、単層中皮細胞から分泌される滑液(心嚢液)が、臓器同士の摩擦を軽減し、癒着病態の中心であるフィブリン形成を防止する役割を持つ。従って、心膜組織を再生させることで癒着防止に寄与するであろうと考えた。本研究では、生体吸収性ポリマーに心膜構成細胞の機能を制御するペプチドを化学修飾した、自己心膜再生を促す「再生型癒着防止人工心膜」を開発し、その有用性を検討する。 本年度では、ポリカプロラクトン(PCL)とポリ乳酸(PDLLA)の共重合体 P(CL-DLLA)を用いてペプチド修飾を試みた。 P(CL-DLLA)は、非特異的に細胞が接着してしまうため、中皮細胞を接着させて線維芽細胞は接着を抑制させるようなポリマー表面構造改質が必要である。これまでにプラズマ処理とシラン化によるペプチド修飾の表面改質で線維芽細胞接着の低減がみられたが、ポリマー自体が分解が進んでいたことが判明した。新しいロットのポリマーで再度プラズマ処理とシラン化したところ、ポリマーが溶けてしまいペプチド修飾ができなくなった。したがって、別の表面処理方法を確立する必要が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペプチド修飾のためのポリマー基材表面を改質する新たな方法の確立が課題であるが、当初の計画の通りに概ね進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
疎水性または浸水性のポリマーを用いて基材表面をスピンコートすることによる改質を図る。ペプチド修飾が成功したら、修飾されたペプチドを定量測定する。また、ペプチド修飾したシート上に中皮細胞および線維芽細胞を播種し、継時的に顕微鏡観察する。生存細胞数の測定を行い、細胞接着性および増殖能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はペプチド修飾の条件検討を主体に行なってきたが、テレワーク等で研究遂行に遅れが生じ、物品費の予定額より使用額が少なくなった。また、成果発表や学会参加のための旅費を計上していたが、web開催となり使用額に差が生じた。次年度では、引き続きペプチド修飾の検討を行うため、その評価のための物品費を使用する。また、順調に進んだ場合は動物実験も行うため、動物購入費や実験動物施設利用費として使用する予定である。
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