研究課題/領域番号 |
21K08828
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 教授 (20382898)
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研究分担者 |
坂元 尚哉 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (20361115)
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
岡村 誉 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70438646)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | nonA-nonB型大動脈解離 / 数値流体力学研究 / 血管内皮細胞-血管平滑筋細胞共培養 |
研究実績の概要 |
本研究では、急性nonA-nonB型大動脈解離の特徴的な血流動態を数値流体力学研究:computational fluid dynamics(CFD)を用いて解析するとともに、血管内皮細胞-血管平滑筋細胞共培養shear stress負荷モデルを使用したin vitro実験を行い、血行力学ストレスが大動脈組織の構造変化に及ぼす影響を解明することを目的としている。 今回、Freiburg 大学の研究グループと共同で、急性nonA-nonB型解離12例と急性B型解離7例のCFD解析を行い、急性B型解離と比較した急性nonA-nonB型解離の血行力学的特徴を評価した。血行力学的には、収縮早期・中期・後期の全時相で、急性B型解離群と比較し急性nonA-nonB型解離群で偽腔圧/真腔圧>1.0の頻度が増加傾向を認めた。本結果は、2022年論文発表した(Interact Cardiovasc Thorac Surg.2022;35(3):ivac138)。 in vitro実験は、血管内皮細胞-血管平滑筋細胞共培養shear stress負荷モデルを収縮型に表現型制御した培養平滑筋細胞を用いて構築し,高壁せん断応力に曝されたモデル内の平滑筋細胞の表現型を評価した。結果は、収縮型平滑筋細胞の中でも高い収縮能をもつことを示すαSMAファイバーを有する細胞の割合は,静置培養および2 Paの壁せん断応力負荷では10 %程度であったのに対し,20 Paの負荷では5 %程度に減少した.また,Calponin1についても静置培養および2 Paと比較して20 Paの負荷で蛍光輝度の減少を確認した。この結果は、高壁せん断応力によって血管平滑筋細胞の表現型転換が引き起こされる可能性が示唆するものであり、2022年度日本機械学会年次大会(2022年9月11日 - 14日富山)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、今後のin vitro実験の礎となる急性nonA-nonB型大動脈解離のCFD研究を国内外の研究機関に先駆けて論文発表した。上記の研究結果を踏まえ、自治医科大学と共同研究機関である名古屋工業大学の臨床研究倫理委員会の承認の元、急性nonA-nonB型大動脈解離の血流病態に関する研究を現在実施している。急性nonA-nonB型大動脈解離の遠隔期の血管イベントと大動脈拡大を評価する臨床研究も、今後実施予定である。 また、急性nonA-nonB型大動脈解離は高頻度に臓器灌流障害を合併する。腹部内臓臓器灌流障害を合併した症例に対する大動脈ステント治療の有用性を評価する血流解析研究も現在実施しており、2023年日本血管外科学会で報告予定である。 血管内皮細胞-血管平滑筋細胞共培養のin vitro実験は、現在、東京都立大学システムデザイン研究科坂元尚哉准教授の研究室と共同で実施している。これまでのCFD解析で急性nonA-nonB型解離は、急性B型解離と比較し、偽腔内の血行力学ストレスが増加する傾向を認めている。血管内皮細胞-血管平滑筋細胞共培養モデルの他、慢性大動脈解離の偽腔壁構造に類似した血管平滑筋が直接血行力学ストレスに暴露される実験モデルの導入も今後検討しており、血行力学ストレスが血管内皮細胞や血管平滑筋細胞の恒常性変化に及ぼす影響を解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、急性nonA-nonB型解離症例と急性B型解離症例の臨床データを使用した血流解析研究を継続する予定である。具体的には、急性大動脈解離(急性nonA-nonB型解離・急性B型解離)の診断で緊急入院する症例のうち、CFD解析が実施可能な偽腔開存型大動脈解離症例を対象として、偽腔圧/真腔圧比の他、真腔・偽腔それぞれで壁剪断応力や血液灌流量を計算し、多くの血行力学パラメーターを使用して急性nonA-nonB型大動脈解離の特殊な血流動態を評価する予定である。 臨床研究では、急性nonA-nonB型解離症例と急性B型解離症例の両群で、発症早期~中期にかけての大動脈の形態変化(大動脈拡大/偽腔消失など)を造影CT検査で評価するとともに、遠隔期の血管イベント(大動脈拡大・手術治療の実施・再解離など)と生存率も両群間で比較検討する。 急性nonA-nonB型解離症例と急性B型解離症例の入院中の末梢血から血漿成分を抽出し、microRNAを精製する。両群間でmicroRNAによる網羅的遺伝子発現解析をマイクロアレイ法により実施し、急性nonA-nonB型解離で発現増強するnon coding RNAを決定する。バイオインフォマティクス解析で、nonA-nonB型解離で発現増強する血行力学ストレスに関連する疾患経路を同定する。その後、in vitro実験で機能解析を行い、血行力学ストレスがnonA-nonB型大動脈解離の大動脈組織に及ぼす影響を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は当初の予定と比較して107万円程度の残金があったため、次年度使用額が発生した。次年度使用額が発生した主な理由は、本研究を開始する以前に、予備実験を行う期間が必要であったこと、大動脈解離症例からの血液サンプル収集のまだ途中の段階であることが主な原因である。 現在、対象症例からの血液サンプルを収集している状況でもあり、血液サンプルを 使用した実験を今後推進していく予定である。 繰り越し金を含めた令和5年度の使用額は約187万円である。本年度の関連研究への費用に関しては、CFD解析のための設備投資として、コンピューターのメモリ増設費用や専用の血流解析ソフトウエア(SC flow)の使用ライセンス契約費用に30万円、RNA精製費用に20万円、DNAマイクロアレイ関連経費に60万円、バイ オインフォマティクス解析費用に20万円、in vitro実験のための培地、細胞株、試薬・抗体購入費用に50万円、 また、急性大動脈解離の最新の診断、治療方法についての知見を広げ、さらに追加実験などのアイデアを得るために国内学会、国際学会などに参加するための旅費、参加費やその他消耗品購入費に15万円程度を予定している。
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